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株式会社設立の教科書 条件・費用・資本金から機関設計まで
株式会社 合同会社 違い 選び方

合同会社ではなく株式会社を選ぶ判断基準|10万円の差を払う理由があるか

株式会社と合同会社の比較表を見ても決められないのは、項目の重みが人によって違うからです。5つの質問に答えるだけで、自分がどちらに寄っているかが分かります。

公開 2026年9月7日 確認日 2026年9月16日 約11分で読めます 本文 約6,100字

この記事は、比較表を見ても決められない段階の人のためのものです

株式会社と合同会社の違いを並べた表はどこにでもあります。それでも決められないのは、表がどの項目が自分にとって重いかを教えてくれないからです。設立費用の10万円が重い人もいれば、将来の出資受け入れのほうが重い人もいます。

この記事では、比較表ではなく5つの質問を用意しました。順番に答えていけば、自分がどちらに寄っているかが見えてきます。あわせて、会社設立の費用差10万円が何に対する対価なのかも整理します。金額と要件は2026年9月16日時点の一次情報にもとづきます。

費用差10万円は「何に対する対価か」を先に押さえる

費用差10万円は「何に対する対価か」を先に押さえる

株式会社と合同会社の会社設立の法定費用は、電子定款・資本金100万円未満の下限でおよそ16万7千円と6万円です。差はおよそ10万7千円。この差は登録免許税の差9万円と、定款認証手数料1万5千円でほぼ説明がつきます。

つまり10万円は、株式会社という器そのものへの対価です。定款認証は公証人に内容を確認してもらう費用、登録免許税は登記という公示制度を使うための税です。サービスの質の差ではありません。

この10万円を払うことで何が得られるかというと、株式という仕組み、認知度の高い名称、そして出資と経営を分けた構造です。逆に言えば、それらを使う予定がなければ、10万円は純粋な追加コストになります。

加えて、株式会社には維持のコストもあります。役員の任期満了ごとの重任登記と、毎年の決算公告です。10年単位で見れば、初期費用の差よりこちらのほうが大きくなることもあります。会社設立の判断は、初期費用だけでなく維持費まで見る必要があります。

以下では、この10万円と維持コストを払う理由があるかどうかを、5つの質問で確かめていきます。すべての質問に「いいえ」なら合同会社、ひとつでも強い「はい」があるなら株式会社、というのが大まかな目安です。

会社設立の法定費用の差(電子定款・資本金100万円未満)
判断すべきなのは、この差額と毎年の維持コストに見合うかどうかです。

出典このセクションの出典:弥生|会社設立費用はいくら?株式会社・合同会社の法人設立費用を比較解説(弥生株式会社/2026年9月16日 確認)

質問1|外部から出資を受ける可能性はあるか

質問1|外部から出資を受ける可能性はあるか

最初の質問は資金調達です。将来、ベンチャーキャピタルや事業会社、個人投資家から出資を受ける可能性があるなら、株式会社を選んでください。投資家の側が株式による出資を前提にしているためです。

合同会社でも出資を受けることは制度上可能です。ただし出資者は社員となり、原則として業務執行にも関わる立場になります。持分の譲渡には他の社員全員の同意が必要で、投資家から見ると回収の道筋が描きにくい構造です。

従業員に株式を持たせる仕組み、いわゆるストックオプションも株式会社の制度です。将来人を採用するときに、給与以外の報い方を用意しておきたいなら、株式会社の会社設立を選ぶ理由になります。

一方で、金融機関からの借入れはどちらの会社形態でも受けられます。創業融資の制度も会社形態を問いません。借入れだけで足りるなら、この質問は「いいえ」でよいということです。資本金の額や自己資金の割合のほうが審査に効きます。

自分の事業が、設備投資や研究開発のために大きな資金を先に要するものか、売上が立ってから回していけるものか。ここを考えると答えが出ます。後者であれば、株式会社である必要は薄くなります。

出典このセクションの出典:GVA法人登記|会社設立時の資本金はいくらにするべき?(GVA TECH/2026年9月16日 確認)

質問2|取引先や発注元が法人格を条件にしていないか

質問2|取引先や発注元が法人格を条件にしていないか

二つ目の質問は取引先です。すでに取引したい相手が決まっているなら、その相手が会社形態を条件にしていないかを確かめてください。「株式会社のみ」と明示している発注元や、取引口座の開設要件に会社形態を含めている企業があります。

業界によっても差があります。建設業の元請、大手メーカーの調達、官公庁の入札などでは、資本金の額や会社形態が要件に含まれることがあります。こうした取引を狙うなら、会社設立の時点で株式会社を選んでおくほうが確実です。

逆に、ウェブ制作、受託開発、コンサルティング、物販といった分野では、会社形態を条件にする取引はあまり多くありません。実績と提案内容で判断されることが一般的で、合同会社でも不利になる場面は限られます。

ここで大事なのは、想像で決めないことです。実際に取引したい相手に聞くのがいちばん早い方法です。取引条件を尋ねることは失礼にはあたりませんし、会社設立の前に確認しておけば後戻りが避けられます。

補助金や助成金の要件も確認しておく価値があります。多くの制度は中小企業であれば会社形態を問いませんが、なかには資本金の額や業種が要件になっているものがあります。使いたい制度が決まっているなら、その要件を先に読んでください。

登記簿は誰でも見られる取引先は登記事項証明書を取得して、商号・本店・代表者・資本金の額・事業目的を確認できます。会社形態だけでなく、資本金の額や設立年月日も見られていると考えておいてください。

出典このセクションの出典:マネーフォワード|株式会社を設立するメリット3つ(マネーフォワード/2026年9月16日 確認)

質問3|数年内に人を採用する予定があるか

質問3|数年内に人を採用する予定があるか

三つ目は採用です。会社形態が応募者の判断にどこまで影響するかは、職種と応募者の層によります。経験者採用では会社形態より事業内容と待遇が見られますが、新卒や第二新卒では名称のなじみが効くことがあります。

合同会社という形態は2006年の会社法で導入されたもので、名称からは内容が伝わりにくい面があります。一方、知名度の高い外資系企業の日本法人が合同会社であることも多く、認識は少しずつ変わってきています。

求人媒体の掲載要件も確認しておくとよいでしょう。多くは会社形態を問いませんが、なかには法人格の種類で扱いが変わるものがあります。会社設立の後に採用を始めてから気づくより、先に調べておくほうが安全です。

採用を予定していないなら、この質問は「いいえ」です。当面ひとりで、あるいは業務委託で外注しながらやっていくつもりなら、名称の差が効いてくる場面はほとんどありません。資本金の額を含め、他の要素で判断してください。

なお、社会保険の適用は会社形態では変わりません。株式会社でも合同会社でも、法人であれば強制適用事業所です。役員報酬を出すなら一人でも加入対象になります。この点は判断材料になりません。

出典このセクションの出典:小谷野税理士法人|合同会社と株式会社の費用を比較(小谷野税理士法人/2026年9月16日 確認)

質問4|いずれ事業を人に引き継ぐ可能性はあるか

質問4|いずれ事業を人に引き継ぐ可能性はあるか

四つ目は承継です。将来、事業を子どもや従業員、第三者に引き継ぐ可能性があるなら、株式会社のほうが移しやすい構造です。株式を譲渡すれば会社ごと引き継げ、取引先との契約も巻き直す必要がありません。

合同会社の持分譲渡には、原則として他の社員全員の同意が必要です。社員が自分ひとりであれば同意の問題は生じませんが、複数いる場合は調整が必要になります。会社設立の時点で何人でやるかによって、この項目の重みが変わります。

相続の場面でも違いが出ます。株式会社の株式は相続財産として相続人に承継されます。合同会社の持分は、定款に定めがなければ相続されず、退社による払戻しの扱いになるのが原則です。会社の財産が外に出る可能性があるということです。

株式会社を選ぶ場合、全株式に譲渡制限を付けておくのが実務上の基本です。譲渡制限があれば、株主が第三者に株式を売ろうとしても会社の承認が必要になり、意図しない相手に株式が渡ることを防げます。会社設立の定款で定める項目です。

逆に、自分の代で終える前提の事業であれば、この質問は「いいえ」です。廃業するときは、株式会社も合同会社も解散と清算の手続が必要で、手間に大きな差はありません。

引き継ぐときの違い
会社設立の時点で承継を考えるのは早すぎるようですが、定款の書き方で備えられます。

出典このセクションの出典:GVA法人登記|株式譲渡制限会社とは?(GVA TECH/2026年9月16日 確認)

質問5|毎年の維持コストと手間を引き受けられるか

質問5|毎年の維持コストと手間を引き受けられるか

五つ目は維持コストです。株式会社には、役員の任期満了ごとの重任登記と、毎年の決算公告という義務があります。合同会社にはどちらもありません。会社設立の初期費用だけでなく、この差も見る必要があります。

重任登記は、取締役の任期が満了するたびに必要です。任期を最長の10年にすれば10年に1回ですが、10年後に忘れるリスクが生まれます。2年にすれば忘れにくい代わりに、2年ごとに登録免許税がかかります。

決算公告は毎年です。官報を選べば掲載のたびに費用がかかり、電子公告を選べば掲載費用はかかりませんが自社サイトを5年間維持する必要があります。どちらにしても、手を動かす作業が毎年発生します。

これらを面倒だと感じるなら、合同会社を選ぶ理由になります。逆に、税理士と顧問契約を結んで一緒に管理してもらうつもりなら、実質的な負担は小さくなります。誰が期限を管理するかが決まっていれば、この質問の重みは下がります。

なお、法人税の計算方法や法人住民税の均等割に会社形態による差はありません。資本金等の額と従業員数で決まるため、株式会社だから税金が高いということはありません。違うのは登記と公告の手間だけです。

出典このセクションの出典:鮎澤パートナーズ|決算公告の義務と方法(鮎澤パートナーズ/2026年9月16日 確認)

5つの質問の答えを合わせて判断する

5つの質問の答えを合わせて判断する

5つの質問を振り返ります。外部からの出資、取引先の条件、採用の予定、事業承継の可能性、維持コストの受容度。このうち上から4つに強い「はい」があれば、株式会社の会社設立を選ぶ理由があります。

判断のための5つの質問
比較表ではなく、この5行で決めてください。

答えが割れる場合は、時間軸で考えてみてください。いま重いのはどれか、3年後に重くなるのはどれか。会社設立の費用は今かかり、資金調達や承継の話は数年後に来ます。今の10万円と、数年後の組織変更の手間を比べる、という形になります。

組織変更の手続は、総社員の同意、債権者保護手続、官報公告が必要で、登録免許税も解散分と設立分の両方がかかります。実際に見積もると、会社設立時に節約した10万円を上回ることも珍しくありません。変更する前提なら最初から株式会社を選ぶほうが素直です。

資本金の額は、どちらの会社形態でも自由に決められます。会社形態の選択と資本金の決定は独立した判断なので、まず形態を決めてから、運転資金と消費税の観点で資本金を決める、という順序で進めてください。

出典このセクションの出典:デイライト法律事務所|株式会社とは?メリット・デメリットと設立の手続き(デイライト法律事務所/2026年9月16日 確認)

選び方についてよく聞かれること

選び方についてよく聞かれること
節税のためにはどちらが有利ですか?
法人税の計算方法に会社形態による差はありません。法人住民税の均等割も資本金等の額と従業員数で決まります。節税の観点では株式会社と合同会社に差はないと考えてください。差が出るのは会社設立の費用と、毎年の登記・公告の手間です。
資本金はどちらも1円から可能ですか?
可能です。会社法上、株式会社も合同会社も最低資本金の定めはありません。ただし登録免許税は資本金の0.7%と下限額の高いほうなので、資本金が大きくなると株式会社と合同会社の差は縮まります。
株式会社にしたら合同会社に戻せますか?
組織変更で可能ですが、株式会社から合同会社への変更も総社員の同意や債権者保護手続が必要です。往復するようなものではないので、最初の判断を丁寧に行ってください。
一人で始めるなら合同会社で十分ですか?
当面ひとりで、自己資金でまわし、取引先も法人格を問わないなら十分です。ただし数年内に出資を受けたい、採用したい、引き継ぎたいという見通しがあるなら、会社設立の時点で株式会社を選んでおくほうが後の手間が少なくて済みます。

質問に共通しているのは、目先の費用と将来の選択肢のどちらを取るかという構造です。株式会社と合同会社の比較は、優劣の比較ではなく、時間軸の異なる項目をどう重みづけるかの問題だと考えてください。

出典このセクションの出典:小谷野税理士法人|合同会社と株式会社の費用を比較(小谷野税理士法人/2026年9月16日 確認)

まとめ|10万円の差は、将来の選択肢への前払い

まとめ|10万円の差は、将来の選択肢への前払い

株式会社と合同会社の会社設立費用の差はおよそ10万7千円です。これは株式という仕組み、認知度の高い名称、出資と経営を分けた構造に対する対価だと考えると、判断しやすくなります。

  • 出資を受ける予定がある株式会社。投資家は株式による出資を前提にしています。
  • 法人格を条件にする取引がある株式会社。実際に取引したい相手に条件を確認してください。
  • いずれ引き継ぐ可能性がある株式会社。株式を譲渡すれば会社ごと移せます。
  • 当面ひとりで自己資金でまわす合同会社。設立費用も維持の手間も軽くなります。

どちらを選んでも、会社設立の手続そのものは大きく変わりません。定款を作り、資本金を払い込み、法務局に登記を申請する。違いは定款認証があるかどうかだけです。形態が決まれば、次は資本金の額と事業目的、機関設計の設計に進めます。

迷いが残るなら、5つの質問のうち「はい」と答えたものを紙に書き出し、その理由を一文で説明してみてください。説明できるなら、それが選ぶ理由です。説明できないなら、その項目はまだ重くないということです。

なお、この記事の金額と要件は2026年9月16日時点の公開情報にもとづきます。登録免許税や公証人手数料は改正されることがあるため、実際に手続を進める前に法務局・日本公証人連合会の公式ページでご確認ください。事業の内容に即した判断が必要な場合は、司法書士・税理士など、その業務を扱える専門家にご相談ください。

出典このセクションの出典:freee|会社設立の費用はいくら?株式会社と合同会社の維持費(freee株式会社/2026年9月16日 確認)

答えが出たら、次は資本金と事業目的の話に進んでください

会社形態が決まれば、次に決めるのは資本金の額と事業目的、そして機関設計です。株式会社を選んだ場合は、取締役を何人にするか、株式に譲渡制限を付けるか、役員の任期を何年にするかまで含めて設計することになります。

どちらを選んでも、会社設立の手続そのものは大きくは変わりません。定款を作り、資本金を払い込み、法務局に登記を申請する。違うのは定款認証があるかどうかだけです。判断に迷いが残るなら、司法書士や税理士に事業の内容を話したうえで意見を聞いてみてください。

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