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株式会社設立の教科書 条件・費用・資本金から機関設計まで
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機関設計の選び方|取締役会・監査役を置くかどうかで、会社の重さが決まる

機関設計は、会社の意思決定の仕組みそのものです。置く機関が増えるほど会社は重くなります。何を基準に選ぶかを考えます。

公開 2026年9月13日 確認日 2026年9月16日 約10分で読めます 本文 約6,000字

この記事は、機関設計という言葉に戸惑っている人のためのものです

機関設計。株式会社の会社設立で出てくる言葉のなかで、最も分かりにくいもののひとつです。会社の意思決定の仕組みをどう組み立てるかという話なのですが、抽象的で判断の基準が見えません。

この記事では、機関設計を選ぶときの観点を四つに整理します。株主の人数、意思決定の速さ、維持の手間、将来の資金調達。自分の事業に当てはめれば、どの構成が合うかが見えてきます。内容は2026年9月16日時点の一次情報にもとづきます。

機関設計とは何を決めることか

機関設計とは何を決めることか

機関設計とは、株式会社にどの機関を置くかを決めることです。機関とは、会社の意思決定や業務執行を担う仕組みのことをいいます。

必ず置かなければならないのは、株主総会と取締役です。この二つがなければ株式会社は成立しません。

それ以外の機関は、定款で定めたときに置かれます。取締役会、監査役、会計参与、監査役会、会計監査人などがあります。

小規模な株式会社の会社設立で選択肢になるのは、取締役会と監査役、そして会計参与です。それ以外は大会社などが対象になります。

機関を置くと、その機関を成立させるための要件が加わります。取締役会なら取締役3人以上、監査役なら監査役1人以上です。

つまり、置く機関が増えるほど必要な人数も手続も増えるという関係です。会社が重くなるということでもあります。

逆に、機関を置かなければ意思決定は単純になります。株主総会と取締役だけなら、決めるのは株主と取締役だけです。

機関設計は定款で定めます。取締役会を置く旨、監査役を置く旨を書けば、その機関が設置されます。書かなければ置かれません。株式会社の会社設立では、定款に何を書くかがそのまま会社の形になります。

以下では、選ぶときの観点を四つに分けて見ていきます。

機関設計で置ける主な機関
株式会社の会社設立では、上の行だけで足りることがほとんどです。

出典このセクションの出典:行政書士かんべ法務事務所|株式会社の機関設計とルール(かんべ法務事務所/2026年9月16日 確認)

観点1|株主の人数

観点1|株主の人数

機関設計を考えるとき、最初に見るのは株主の人数です。株式会社の会社設立で、ここが最も影響します。

株主が自分ひとりなら、株主総会は自分の意思決定そのものです。招集も決議も形式的なもので、実質的な調整は生じません。

この場合、取締役会を置いて意思決定を委ねる意味がありません。株主総会を簡略化する必要がないためです。

株主が数人でも、全員が経営に関わっているなら同じです。株主総会と取締役会の構成員がほぼ重なるため、二重の会議になります。

株主が多数いて、経営に関わらない株主がいる場合に、取締役会の意味が出てきます。日常の意思決定を経営陣に委ねられるためです。

株式会社の会社設立の時点で株主が多数いることは稀です。したがって、取締役会を置く実益もほとんどありません。

将来、出資を受けて株主が増えたときに、定款変更で取締役会を置けばよいという順序になります。

株主が複数いる場合は、持株比率の設計のほうが機関設計より重要になります。誰が過半数を持つか、3分の2以上を持つか。株式会社の会社設立では、この比率が意思決定の実質を決めます。機関を増やしても比率は変わりません。

なお、資本金の額は株主の人数とは別の話です。ひとりで資本金1,000万円を出すこともできますし、複数人で100万円を分担することもできます。

出典このセクションの出典:ベリーベスト法律事務所|持株比率とは?注意すべき持株比率ライン(ベリーベスト法律事務所/2026年9月16日 確認)

観点2|意思決定の速さ

観点2|意思決定の速さ

二つめの観点は、意思決定の速さです。株式会社の会社設立で、機関を増やすほど決定に時間がかかるようになります。

取締役1名の株式会社では、業務の決定は取締役が単独で行います。会議も議事録も不要で、その場で決められます。

取締役が複数いる場合、業務の決定は取締役の過半数で行うのが原則です。人数が増えるほど調整が必要になります。

取締役会を置くと、重要な業務執行の決定は取締役会の決議によることになります。招集の手続を経て、決議し、議事録を作ります。

取締役会は3か月に1回以上の開催が求められます。定期的に会議を開き、記録を残す運用が必要です。

小規模な会社では、この手続が実態に合わないことが多くあります。実際には代表者が決めているのに、形式だけ整えることになります。

会社設立の段階では、意思決定を速くすることを優先して構いません。取締役1名が最も速い構成です。

相互チェックが必要になるのは、会社の規模が大きくなり、代表者以外の人の利害が関わるようになってからです。株式会社の会社設立の直後は、代表者が自分の資本金を使って自分の事業を進める段階なので、チェック機能の必要性は高くありません。

なお、速さと引き換えに失うのは相互チェックです。一人で決められるということは、誰も止められないということでもあります。

出典このセクションの出典:デイライト法律事務所|株式会社とは?メリット・デメリットと設立の手続き(デイライト法律事務所/2026年9月16日 確認)

観点3|維持の手間と費用

観点3|維持の手間と費用

三つめの観点は、維持の手間と費用です。株式会社の会社設立で置いた機関は、その後もずっと維持することになります。

役員には任期があります。取締役は原則2年、監査役は原則4年。非公開会社なら定款で最長10年まで伸ばせます。

任期が満了すれば、同じ人が続ける場合でも重任登記が必要です。役員が多いほど手続の対象も増えます

登録免許税は、資本金1億円以下の会社で1回1万円です。役員の人数にかかわらず1件分ですが、手続そのものは必要です。

取締役会を置いていれば、3か月に1回以上の開催と議事録の作成が加わります。監査役を置けば、監査報告の作成も必要になります。

役員が辞任したり死亡したりすれば、そのたびに変更登記が必要です。2週間以内という期限もあります。

取締役会を置いている場合、取締役が2人になると要件を欠きます。人数を維持し続ける負担も考えてください。

役員に支払う報酬も維持費です。名前だけの役員でも報酬を支払えば社会保険料がかかり、支払わなければ協力を得にくくなります。株式会社の会社設立で機関を増やすときは、資本金として用意した運転資金への影響も見てください。

会社設立の時点で人が揃っていても、数年後も揃っている保証はありません。維持できる構成を選ぶのが現実的です。

出典このセクションの出典:マネーフォワード|役員(取締役や監査役)の任期は10年?(マネーフォワード/2026年9月16日 確認)

観点4|将来の資金調達

観点4|将来の資金調達

四つめの観点は、将来の資金調達です。株式会社の会社設立で、外部から出資を受ける可能性がある場合に関係します。

投資家から出資を受けると、株主が増えます。経営に関わらない株主が生まれるため、取締役会の意味が出てきます。

投資家側が、取締役の派遣や取締役会の設置を求めることもあります。投資契約の条件として交渉される部分です。

ただし、これは出資を受ける段階の話です。会社設立の時点で先回りして取締役会を置く必要はありません。

出資の交渉が具体化した段階で、定款変更と変更登記をすれば足ります。その時点で投資家の要望も分かります。

逆に、会社設立の時点で取締役会を置いておくと、人数を維持する負担が数年間続きます。出資を受けられるとは限りません。

資本金を増やす増資も、機関設計とは別の話です。非公開会社では、募集事項の決定は原則として株主総会の特別決議によります。

融資の場面でも機関設計はほとんど問われません。金融機関が見るのは事業計画、代表者の経歴、自己資金の割合です。株式会社の会社設立の直後であれば、資本金の額のほうが機関設計より重く見られます。

つまり、将来の資金調達を理由に会社設立の時点で機関を増やす必要はありません。必要になってから足すで間に合います。

出典このセクションの出典:GVA法人登記|会社設立時の資本金はいくらにするべき?(GVA TECH/2026年9月16日 確認)

非公開会社にすると選択肢が広がる

非公開会社にすると選択肢が広がる

全株式に譲渡制限を付けた会社を非公開会社といいます。株式会社の会社設立では、小規模な会社のほぼすべてが非公開会社にしています。

非公開会社にすると、機関設計の自由度が上がります。取締役会を置かない設計を選べ、取締役1名でも成立します。

公開会社では、取締役会の設置が必須です。取締役3人以上と監査役が必要になり、小規模な運営には向きません

また、非公開会社では役員の任期を最長10年まで伸ばせます。重任登記の回数を減らせるため、維持の手間が軽くなります。

発行可能株式総数の4倍ルールも適用されません。将来の増資に備えて、余裕を持った数を定められます。

譲渡制限を付けることで、株式が意図しない相手に渡ることも防げます。共同創業者が抜けるときの備えにもなります。

定款に譲渡制限の定めを置き、登記すべき事項にも記載します。会社設立で書き漏らすと登記簿に反映されないため注意してください。

株式に譲渡制限を付けても、株式を譲渡できなくなるわけではありません。会社の承認を得れば譲渡できます。資本金を出した人が抜けたいときの出口は確保されているということです。株式会社の会社設立で共同創業者に説明しておくと誤解が生じません。

なお、資本金の額と非公開会社かどうかは関係ありません。資本金がいくらであっても、譲渡制限を付ければ非公開会社になります。

出典このセクションの出典:GVA法人登記|株式譲渡制限会社とは?(GVA TECH/2026年9月16日 確認)

後から変えるときの手続

後から変えるときの手続

機関設計は後から変えられます。株式会社の会社設立で最小構成を選んでおいても、必要になれば追加できます。

取締役会を置くには、株主総会の特別決議で定款を変更し、変更登記をします。あわせて取締役3人以上と監査役を選任する必要があります。

監査役だけを置く場合も、定款変更と変更登記が必要です。監査役の就任承諾書と本人確認証明書も添付します。

逆に、取締役会を廃止する場合も同じ手続です。定款変更と変更登記を行い、取締役会設置会社の定めを抹消します。

登録免許税がかかります。機関設計の変更にかかる額は登記の内容によりますが、数万円の単位になります。

変更のたびに費用と手間が発生するため、頻繁に変えるものではありません。会社設立の時点で、数年先を見据えて選んでください。

変更のタイミングとしては、決算期や役員の任期満了に合わせると効率的です。任期満了で役員を選び直すときに機関設計も変えれば、登記を一度にまとめられます。株式会社の会社設立から数年後に体制を見直す場面で使える工夫です。

ただし、迷ったときに最小構成を選ぶのは合理的です。足すのは簡単で、外すのは人間関係を伴うためです。

なお、資本金を増やす増資は機関設計の変更とは別の手続です。同時に行うこともできますが、それぞれに登録免許税がかかります。

出典このセクションの出典:行政書士かんべ法務事務所|株式会社の機関設計とルール(かんべ法務事務所/2026年9月16日 確認)

機関設計についてよく聞かれること

機関設計についてよく聞かれること
会計参与を置くとどうなりますか?
税理士や公認会計士が取締役と共同で計算書類を作成します。金融機関からの信用が高まる面がありますが、報酬が発生し、登記事項も増えます。株式会社の会社設立で置く例は多くありません。
監査役の監査範囲を限定できますか?
非公開会社では、定款で監査の範囲を会計に関するものに限定できます。業務監査を含めないという設計です。監査役を置く場合は、この選択も検討してください。
取締役会を置かないと信用されませんか?
取引先が機関設計を確認することは多くありません。見られるのは資本金の額や事業の実態です。株式会社の会社設立で、信用を理由に取締役会を置く必要はほとんどないでしょう。
株主が増えたら必ず取締役会が必要ですか?
必要ではありません。株主が増えても、定款で定めなければ取締役会は設置されません。ただし経営に関わらない株主が増えると、意思決定を委ねる仕組みが求められることはあります。

質問に共通しているのは、置く必要があるかどうかという点です。株式会社の会社設立では、必ず置くのは株主総会と取締役だけです。残りは自分の事業に必要かどうかで判断してください。

出典このセクションの出典:日本監査役協会|機関設計の図解(日本監査役協会/2026年9月16日 確認)

まとめ|最小構成から始め、非公開会社にしておく

まとめ|最小構成から始め、非公開会社にしておく

株式会社の機関設計は、どの機関を置くかを決めることです。必ず置くのは株主総会と取締役だけで、残りは任意です。

  • 株主の人数少ないほど機関を増やす必要が薄れる。ひとりなら最小構成で十分。
  • 意思決定の速さ機関が少ないほど速い。取締役1名が最も速い。
  • 維持の手間役員が多いほど登記も会議も増える。維持できる構成を選ぶ。
  • 将来の資金調達必要になってから足せばよい。先回りする必要はない。

小規模な会社設立では、取締役1名・監査役なしという最小構成が最もよく選ばれます。手続も費用も最小で、定款認証の手数料の軽減要件にも当てはまります。

あわせて、全株式に譲渡制限を付けて非公開会社にしてください。機関設計の自由度が上がり、役員の任期を最長10年まで伸ばせます。

機関設計は後から変えられます。定款変更と変更登記が必要で登録免許税がかかりますが、足すのは難しくありません。

逆に、置いた機関を外したり役員を減らしたりするほうが難しくなります。会社設立の時点で迷ったら、最小構成を選んでください。

なお、この記事の内容は2026年9月16日時点の会社法にもとづきます。条文や取扱いは改正されることがあるため、実際の手続の前に法務局の公式情報でご確認ください。機関設計で迷う場合は、司法書士など、その業務を扱える専門家にご相談ください。

出典このセクションの出典:行政書士かんべ法務事務所|株式会社の機関設計とルール(かんべ法務事務所/2026年9月16日 確認)

最小構成を選んだら、譲渡制限と任期も決めてください

機関設計が決まったら、あわせて株式の譲渡制限と役員の任期も決めます。全株式に譲渡制限を付けると非公開会社になり、機関設計の自由度と任期の伸長が使えるようになります。

これらはすべて定款で定める項目です。株式会社の会社設立の準備段階でまとめて決めておくと、定款作成が一度で済みます。判断に迷う部分は、司法書士や公証役場の事前確認も活用してください。

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