株式会社と合同会社の違い12項目|費用・意思決定・公告・承継を並べて比べる
株式会社と合同会社の差は、設立費用だけではありません。意思決定の仕組み、公告の義務、持分の譲渡、任期。12項目を並べると、費用差の裏にある構造の違いが見えてきます。

この記事は、株式会社にするか合同会社にするかで最後まで迷っている人のためのものです
会社設立を調べ始めると、必ず出てくるのがこの比較です。「合同会社のほうが安い」「株式会社のほうが信用がある」。どちらも間違いではありませんが、それだけで決めると、後から効いてくる違いを見落とします。
この記事では、株式会社と合同会社の違いを12項目に分けて並べます。費用の差だけでなく、意思決定の仕組み、持分をどう動かせるか、毎年何を義務づけられるかまで含めて比べます。金額と要件は2026年9月16日時点の一次情報にもとづきます。
いちばん大きな違いは、出資と経営が分かれているかどうか

株式会社と合同会社の違いを費用から入ると、本質を見落とします。二つの会社形態を分けているのは、出資者と経営者を制度として分けているかどうかです。
株式会社では、出資した人は株主になり、経営は取締役が担います。株主と取締役が同じ人であっても構いませんが、制度としては別の立場です。だから株式を他人に売っても、経営はそのまま続けられます。
合同会社では、出資した人が社員となり、原則としてその社員が業務を執行します。出資と経営が一体になっているため、持分を他人に譲るには原則として他の社員全員の同意が必要です。人的な結びつきが強い設計です。
この違いから、他のほとんどの差が導かれます。株式会社に定款認証が必要なのも、決算公告の義務があるのも、役員に任期があるのも、出資者が経営者と別に存在しうることを前提にした仕組みだからです。会社設立の費用差も、この構造の差の反映です。

出典このセクションの出典:デイライト法律事務所|株式会社とは?メリット・デメリットと設立の手続き(デイライト法律事務所/2026年9月16日 確認)
設立費用|法定費用で約10万円の差がつく

会社設立の法定費用を比べると、株式会社は電子定款・資本金100万円未満の下限でおよそ16万7千円、合同会社はおよそ6万円です。差は10万円強になります。
差の中身は二つです。ひとつは登録免許税で、株式会社は資本金の0.7%と15万円の高いほう、合同会社は資本金の0.7%と6万円の高いほうです。もうひとつは定款認証の公証人手数料で、合同会社には定款認証そのものがありません。
定款に貼る収入印紙4万円は、どちらの会社形態でも紙の定款なら必要です。電子定款にすれば両方ともかかりません。ここは差にならない部分です。
資本金を大きくすると、登録免許税の差も広がります。資本金3,000万円なら、どちらも0.7%の21万円になるため差は消えますが、そこまで資本金を積む会社設立は多くありません。小さく始めるほど、比率としての差は大きくなります。

出典このセクションの出典:弥生|会社設立費用はいくら?株式会社・合同会社の法人設立費用を比較解説(弥生株式会社/2026年9月16日 確認)
設立にかかる日数|定款認証の有無で1週間ほど変わる

株式会社の会社設立では、定款を作った後に公証役場で認証を受けます。事前確認のやりとりと予約の調整を含めると、この工程だけで数日から1週間程度かかるのが一般的です。
合同会社にはこの工程がありません。定款を作ったらそのまま登記申請に進めます。結果として、準備が同じように整っていれば、合同会社のほうが1週間ほど早く登記申請にたどり着けます。
ただし、登記の完了までの日数は会社形態では変わりません。法務局の処理日数は同じで、管轄や時期によりますが1週間前後が目安です。会社の成立日は申請日なので、急ぐ場合はどちらも申請日をどこに置くかで調整します。
もうひとつ、株式会社では定款の文言を公証人に見てもらえるという面もあります。事業目的の表現や機関設計の整合性を第三者が確認するため、結果として内容の誤りに気づける機会になります。合同会社は自分で作った定款をそのまま使うので、会社設立の後になって不備に気づくこともあります。日数の差には、こうした裏返しの意味もあります。
日数を縮めたいなら、会社形態を変えるより準備を前倒しするほうが効果的です。商号と事業目的を決め、印鑑を発注し、印鑑証明書を取っておく。これらは株式会社でも合同会社でも同じように効きます。
出典このセクションの出典:マネーフォワード|会社設立にかかる時間は?(マネーフォワード/2026年9月16日 確認)
意思決定|株主総会と取締役か、社員の合意か

株式会社の意思決定は、株主総会と取締役(または取締役会)で行います。株主総会の議決権は持株数に応じて配分されるため、出資額の多い人の意向が通りやすい構造です。過半数、3分の2以上といった比率が明確に効いてきます。
合同会社では、原則として社員の頭数で決まります。出資額が多くても、社員1人につき1票です。定款で出資比率に応じた議決権を定めることもできますが、既定値は頭数です。ここは会社設立の時点で意識しておくべき違いです。
一人で会社設立をする場合、この違いはほとんど問題になりません。自分ひとりなので、どちらでも意思決定は自分で完結します。差が出るのは、二人以上で始めるときや、後から出資者を迎えるときです。
複数人で始めるなら、出資額に差をつけたい場合は株式会社のほうが素直に設計できます。合同会社で出資比率に応じた議決権にするには定款で丁寧に定める必要があり、条項の作り込みが求められます。
もうひとつ、合同会社では社員が退社するときに持分の払戻しが発生し得る点も押さえておきたいところです。会社の財産が外に出ていく可能性があるということで、資本金を厚くしていても安心とは限りません。株式会社では株主が会社に払戻しを請求できる場面は限られており、この点では会社財産が安定します。複数人で会社設立をするなら、無視できない違いです。
出典このセクションの出典:行政書士かんべ法務事務所|株式会社の機関設計とルール(かんべ法務事務所/2026年9月16日 確認)
役員の任期と決算公告|株式会社だけに続く義務

株式会社の取締役には任期があります。原則2年、非公開会社なら定款で最長10年まで伸ばせます。任期が満了すれば、同じ人が続ける場合でも重任の登記が必要で、そのたびに登録免許税がかかります。
合同会社の業務執行社員には任期がありません。人が変わらない限り、登記をやり直す必要がないということです。長く続ける会社ほど、この差は積み上がります。
決算公告も株式会社だけの義務です。定時株主総会の後に、貸借対照表またはその要旨を官報・日刊新聞紙・電子公告のいずれかで公告します。合同会社にこの義務はありません。官報を選べば掲載のたびに費用がかかります。
つまり、会社設立時の費用差だけでなく、毎年の維持にかかる手間と費用にも差があるということです。10年単位で見れば、重任登記と決算公告の分だけ株式会社のほうが負担が大きくなります。

出典このセクションの出典:鮎澤パートナーズ|決算公告の義務と方法(鮎澤パートナーズ/2026年9月16日 確認)
資金調達と事業承継|株式という道具があるかどうか

株式会社は株式を発行して出資を受けられます。ベンチャーキャピタルからの出資や、従業員へのストックオプションといった仕組みは、株式会社であることが前提です。将来その可能性があるなら、会社設立の時点で株式会社にしておく意味があります。
合同会社でも出資を受けることはできますが、出資者は社員となり、原則として業務執行にも関わる立場になります。持分の譲渡には他の社員全員の同意が必要で、投資家の側から見ると出口が設計しにくい構造です。
事業承継の場面でも差が出ます。株式会社は株式を譲渡すれば会社ごと引き継げます。取引先との契約も会社が当事者のままなので、巻き直しが不要です。合同会社の持分譲渡には他の社員の同意が要るため、社員が複数いる場合は調整が必要になります。
ただし、一人で作った合同会社を一人に引き継ぐ場合は、社員が自分だけなので同意の問題は生じません。将来何人でやるかという見通しが、この項目の重みを決めます。
資本金についても触れておきます。どちらの会社形態でも下限はなく、1円から会社設立ができます。増資の手続にも大きな差はありません。資本金の額そのものは、株式会社と合同会社を分ける論点にはなりません。
出典このセクションの出典:GVA法人登記|会社設立時の資本金はいくらにするべき?(GVA TECH/2026年9月16日 確認)
信用と認知度|差はあるが、数字ほど大きくない場面もある

株式会社という名称は、日本で長く使われてきたぶん認知度が高く、取引先や求職者にとって理解しやすい形です。合同会社は2006年の会社法で導入された比較的新しい形態で、名称だけで内容が伝わりにくい面があります。
ただし、実際の取引で見られているのは名称よりも事業の実態であることも多いのが実情です。取引先が確認するのは、登記事項証明書の内容、決算書、過去の実績です。会社設立の直後はどちらの形態でも実績がないという点では同じです。
差が出やすいのは、法人格の種類を要件にしている取引です。「株式会社のみ」と条件を切っている発注元や、補助金・助成金の要件、一部の許認可などです。こうした要件に当たる可能性があるなら、株式会社を選ぶ理由になります。
金融機関との関係では、会社形態そのものよりも決算の内容と代表者の経歴が見られるのが一般的です。創業融資の制度も株式会社・合同会社のどちらでも使えます。資本金の額や自己資金の割合のほうが審査に効くため、会社設立の形態選びで融資の可否が決まると考える必要はありません。
採用の場面では、応募者が会社形態を見ることがあります。特に新卒採用や、初めて転職する人にとっては、合同会社という名称になじみがない場合があります。とはいえ、知名度の高い外資系企業の日本法人が合同会社であることも多く、認識は変わりつつあります。
出典このセクションの出典:小谷野税理士法人|合同会社と株式会社の費用を比較(小谷野税理士法人/2026年9月16日 確認)
株式会社と合同会社の違いでよく聞かれること

- 税金の扱いに違いはありますか?
- 法人税の計算方法に違いはありません。どちらも普通法人として同じ税率で計算します。法人住民税の均等割も資本金等の額と従業員数で決まるため、会社形態では変わりません。税の面だけで見るなら、株式会社と合同会社に差はないと考えて差し支えありません。
- 合同会社でも代表取締役を名乗れますか?
- 会社法上の名称は「代表社員」です。対外的な呼称として「代表」や「CEO」を使うことはできますが、登記される肩書は代表社員です。名刺や契約書での表記に違和感がないかは確認しておくとよいでしょう。
- 後から株式会社に変更できますか?
- 組織変更の手続で可能です。総社員の同意、債権者保護手続、官報公告が必要で、登録免許税は合同会社の解散分と株式会社の設立分の両方がかかります。会社設立時に節約した費用を上回ることもあるため、将来の変更を前提にするなら最初から株式会社という選択もあります。
- 一人で作るならどちらが向いていますか?
- 費用と維持の手間だけで見れば合同会社です。将来の出資受け入れや、取引先・採用での見え方を重く見るなら株式会社です。資本金の額や事業内容によっても答えが変わるため、重く見る項目を3つ選んで判断してください。
質問の多くは「どちらが得か」という形を取りますが、実際にはどの項目を重く見るかの問題です。会社設立の費用は一度きり、維持の手間は毎年続き、資金調達や承継の話は数年後に来ます。時間軸の違う項目を並べて比べている、という意識を持つと判断しやすくなります。
出典このセクションの出典:freee|会社設立の費用はいくら?株式会社と合同会社の維持費(freee株式会社/2026年9月16日 確認)
まとめ|12項目を一覧にして、重い項目から決める

株式会社と合同会社の違いを12項目に整理します。会社設立の費用は分かりやすい差ですが、それだけで決めると、毎年の義務や将来の選択肢を見落とします。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税の下限 | 15万円 | 6万円 |
| 定款認証 | 必要(1.5万〜5万円) | 不要 |
| 法定費用の下限 | 約16万7千円 | 約6万円 |
| 出資者の呼び名 | 株主 | 社員 |
| 経営を担う人 | 取締役 | 原則として社員 |
| 意思決定 | 持株数に応じた議決権 | 原則として頭数 |
| 役員の任期 | 原則2年(最長10年) | なし |
| 重任登記 | 必要 | 不要 |
| 決算公告 | 必要 | 不要 |
| 持分・株式の譲渡 | 原則自由(制限を付けられる) | 他の社員全員の同意 |
| 外部からの出資 | 株式を発行できる | 社員として迎える |
| 資本金の下限 | 1円 | 1円 |
並べてみると、合同会社は安く作れて維持も軽い、株式会社は将来の選択肢が広いという整理になります。どちらが優れているという話ではなく、自分の事業がどちらの性質を必要としているかという話です。
一人で小さく始めて、当面は自己資金でまわす。そういう事業なら合同会社で十分なことが多いでしょう。数年内に外部から出資を受けたい、法人限定の取引に入りたい、いずれ人に引き継ぎたい。そうであれば株式会社の会社設立を選ぶ理由があります。
なお、この記事の金額と要件は2026年9月16日時点の公開情報にもとづきます。登録免許税も公証人手数料も改正されることがあるため、実際に手続を進める前に法務局・日本公証人連合会の公式ページでご確認ください。どちらを選ぶかの判断が事業に大きく影響する場合は、司法書士・税理士など、その業務を扱える専門家にご相談ください。
出典このセクションの出典:三菱UFJ銀行|会社設立の費用はどれくらい?(三菱UFJ銀行/2026年9月16日 確認)
12項目を見たうえで、自分が重く見る項目を3つ選んでください
株式会社と合同会社のどちらが優れているかという問いには答えがありません。あるのは、自分の事業にとってどの項目が重いか、という問いだけです。設立費用の10万円が重い人もいれば、将来の出資受け入れのほうが重い人もいます。
12項目のなかから、自分が重く見るものを3つ選んでみてください。それが株式会社側に寄っていれば株式会社、合同会社側に寄っていれば合同会社です。資本金の額や事業目的の設計もあわせて考える必要があるので、判断に迷う場合は司法書士や税理士に相談することをおすすめします。
この記事は、株式会社の会社設立を決めるうえで役に立ちましたか?
押しても個人が特定される情報は送信していません。判断に迷う論点があれば、法務局・公証役場や司法書士・税理士にもあわせてご確認ください。