発行可能株式総数の決め方|資本金と1株の金額から株数を設計する
発行可能株式総数は、将来発行できる株式の上限です。資本金を1株の金額で割って設立時の株数を出し、その何倍かに設定します。

この記事は、株数の決め方が分からない人のためのものです
株式会社の会社設立で定款を書いていると、発行可能株式総数という欄が出てきます。何株にすればよいのか、基準がないと感じる項目です。
決め方には順序があります。資本金の額を1株の金額で割って設立時発行株式数を出し、その何倍かに設定する。この記事では、その手順と考え方を整理します。内容は2026年9月16日時点の一次情報にもとづきます。
発行可能株式総数とは何か

発行可能株式総数は、会社が将来発行できる株式の上限です。株式会社の会社設立で、定款に定める必要があります。
会社法27条の絶対的記載事項には含まれませんが、株式会社の設立時までに定款で定めなければなりません。登記事項でもあります。
つまり、実務上は絶対的記載事項と同じように扱われます。定めがなければ会社設立の手続を進められません。
設立時に実際に発行する株式の数は、これとは別に定めます。こちらは「発行済株式の総数」として登記されます。
たとえば、発行可能株式総数を400株とし、設立時に100株を発行する。この場合、将来あと300株まで発行できるということです。
枠を用意しておく理由は、増資のたびに定款変更をしなくて済むようにするためです。枠の範囲内であれば、新株を発行できます。
枠を超えて発行するには、定款変更と変更登記が必要になります。手続と費用がかかるため、余裕を持たせておくのが実務です。
株式会社では、株式の数がそのまま議決権の数になります。株主総会で誰が何票を持つかが、この株数で決まるということです。会社設立の時点で株数を設計するのは、将来の意思決定の仕組みを設計することでもあります。
株式を発行できるのは株式会社だけです。合同会社には株式という仕組みがなく、出資持分という別の考え方を使います。将来の資金調達や従業員への株式付与を見込むなら、株式会社を選ぶ理由のひとつになります。
以下では、具体的な決め方の手順を見ていきます。

出典このセクションの出典:GVA法人登記|発行可能株式総数とは?変更方法(GVA TECH/2026年9月16日 確認)
手順1|資本金の額を決める

株数を決めるには、まず資本金の額を決めます。株式会社の会社設立で、株数は資本金から導かれるためです。
資本金の額は、運転資金・許認可の要件・税の扱いという三つの軸で決めます。当面の固定費の3か月から6か月分が目安です。
1,000万円未満にすれば、設立1期目と2期目は原則として消費税の免税事業者になれます。この線は越えないのが一般的です。
100万円未満にすれば、定款認証の公証人手数料が下がる可能性があります。ただし運転資金として足りなければ意味がありません。
許認可が必要な事業では、業法が資本金の額を要件にしていることがあります。この場合は要件を満たす額が必要です。
資本金の額が決まれば、株数の計算に進めます。逆に、ここが決まらないと株数も決められません。
なお、資本金の額は定款・払込証明書・登記申請書・登記すべき事項の四箇所に出てきます。会社設立の書類で一致させる必要があります。
株式会社の資本金は、払い込まれた額のうち資本金に計上した額です。払込額の2分の1を超えない額を資本準備金とすることもでき、その場合は資本金の額が小さくなります。株数の計算では、払い込まれた総額と発行する株式数の関係を見ることになります。
複数の発起人がいる場合は、各人の出資額も決めます。合計が資本金の額と一致していることを確認してください。
出典このセクションの出典:辻・本郷 税理士法人|会社設立の資本金の決め方とは?(辻・本郷 税理士法人/2026年9月16日 確認)
手順2|1株の金額を決める

次に、1株の金額を決めます。株式会社の会社設立で、法律上の定めはありません。自由に決められます。
実務では、1万円または1,000円といったきりのよい額が選ばれます。5万円や10万円にする例もあります。
選ぶ基準は、株数が扱いやすくなるかです。資本金を1株の金額で割ったときに、割り切れる数になるのが望ましくなります。
たとえば資本金100万円で1株1万円なら100株。1株1,000円なら1,000株です。どちらも割り切れます。
複数の発起人がいる場合は、配分しやすい株数になるかも考えます。2対1に配分するなら、3で割り切れる株数が便利です。
株数が少なすぎると、後から株式を譲渡するときに細かい調整ができません。逆に多すぎても管理が煩雑になります。
将来、従業員に株式を渡す可能性があるなら、ある程度の株数があったほうが配分しやすくなります。会社設立の時点で見通しを立ててください。
株式会社では、株式に額面という概念がありません。かつての額面株式は廃止されており、1株の金額は払込金額として定めるものです。会社設立の定款では、設立時発行株式1株と引換えに払い込む金額として記載します。
なお、1株の金額は定款に定めるほか、払込証明書にも記載します。資本金の総額を株数で割った額と一致させてください。
出典このセクションの出典:弥生|株式・発行可能株式総数とは?(弥生株式会社/2026年9月16日 確認)
手順3|設立時発行株式数を出す

資本金の額と1株の金額が決まれば、設立時発行株式数が出ます。株式会社の会社設立で、単純な割り算です。
資本金100万円で1株1万円なら、100万円 ÷ 1万円 = 100株。これが設立時に発行する株式の数です。
この数は、登記すべき事項に「発行済株式の総数」として記載されます。登記簿に載る数字です。
複数の発起人がいる場合は、各人が引き受ける株式の数を配分します。合計が設立時発行株式数と一致していることを確認してください。
配分の比率が、そのまま持株比率になります。議決権の比率でもあるため、慎重に決める必要があります。
たとえば100株を70株と30株に配分すれば、持株比率は70対30です。70株を持つ人が過半数を握ります。
各発起人が引き受ける株式の数と払込金額は、定款に記載するのが一般的です。会社設立の書類で整合させてください。
端数が出ないように設計するのも実務上のコツです。株式会社の資本金を300万円、1株1万円として300株にすれば、2対1の配分は200株と100株できれいに割り切れます。配分しにくい株数にすると、後の譲渡でも扱いにくくなります。
なお、払込証明書には払い込まれた株式の総数と1株あたりの払込金額を書きます。ここでも同じ数字が出てきます。
出典このセクションの出典:GVA法人登記|発行可能株式総数とは?変更方法(GVA TECH/2026年9月16日 確認)
手順4|発行可能株式総数を決める

最後に、発行可能株式総数を決めます。株式会社の会社設立で、将来の枠を用意する作業です。
設立時発行株式数の何倍にするかを決めます。実務では4倍から10倍程度が選ばれることが多くあります。
設立時発行株式数が100株なら、発行可能株式総数は400株から1,000株といった具合です。
非公開会社では、発行可能株式総数に上限の定めがありません。全株式に譲渡制限を付けていれば、何倍にしても構いません。
公開会社では、発行可能株式総数は設立時発行株式数の4倍までという制限があります。これが4倍ルールと呼ばれるものです。
小規模な株式会社の会社設立では非公開会社にするのが一般的なので、この制限は関係しません。自由に決められます。
大きくしすぎても実害はほとんどありません。逆に小さすぎると、増資のときに定款変更が必要になります。
発行可能株式総数を定めるのは、既存株主の持分が無制限に薄まることを防ぐためでもあります。取締役が自由に新株を発行できてしまうと、株主の持分が希薄化します。株式会社の会社設立で枠を定めるのは、そうした歯止めの仕組みでもあります。
迷ったら、設立時発行株式数の10倍程度にしておけば、当面は足りることが多いでしょう。
出典このセクションの出典:GVA法人登記|発行可能株式総数とは?変更方法(GVA TECH/2026年9月16日 確認)
増資のときにどう使われるか

発行可能株式総数は、増資のときに意味を持ちます。株式会社の会社設立で枠を用意しておく理由です。
増資は、新株を発行して払込みを受ける手続です。発行できるのは、発行可能株式総数から発行済株式の総数を引いた範囲内です。
発行可能株式総数が400株、発行済みが100株なら、あと300株まで発行できます。この範囲内なら定款変更が不要です。
枠を超えて発行するには、株主総会の特別決議で定款を変更し、変更登記をすることになります。登録免許税もかかります。
増資そのものにも変更登記が必要で、増加額の0.7%(最低3万円)の登録免許税がかかります。定款変更が加わると、さらに費用が増えます。
したがって、会社設立の時点で余裕を持たせておくと、将来の手続が軽くなります。
株式分割をする場合も、発行可能株式総数の枠が関係します。1株を2株に分割すれば発行済株式数が倍になるため、枠を超えないか確認が必要です。
逆に、資本金だけを増やして株式を増やさない方法もあります。資本準備金を資本金に振り替える場合などです。株式会社の会社設立の後、決算書の見え方を整えるために使われることがあります。
なお、資本金を増やさずに株式だけを増やすこともできます。株式分割がその例で、資本金の額は変わりません。
出典このセクションの出典:GVA法人登記|会社設立時の資本金はいくらにするべき?(GVA TECH/2026年9月16日 確認)
後から変える場合の手続

発行可能株式総数は後から変えられます。株式会社の会社設立で小さく設定してしまった場合でも、増やすことができます。
手続は、株主総会の特別決議で定款を変更し、変更登記をするという流れです。議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
変更登記には登録免許税がかかります。定款変更に伴う登記として、所定の額を納めることになります。
株主が自分ひとりであれば、決議そのものは簡単です。議事録を作って残すことが実務上の作業になります。
株主が複数いる場合は、3分の2以上の賛成が必要です。持株比率によっては、単独で決められないこともあります。
増資と同時に定款変更をする場合は、登記をまとめて申請できます。それぞれに登録免許税がかかりますが、手続の回数は減ります。
減らすこともできますが、発行済株式の総数を下回る数にはできません。会社設立の後、枠を小さくする理由はあまりありません。
変更の必要が生じるのは、たいてい増資の場面です。出資を受ける話が具体化してから枠が足りないと気づくと、定款変更の決議と登記で時間を取られます。株式会社の会社設立で余裕を持たせておく価値は、この場面で表れます。
なお、公開会社にする場合は4倍ルールの制限がかかります。非公開会社から公開会社に移る場面では、枠の調整が必要になることがあります。
出典このセクションの出典:GVA法人登記|発行可能株式総数とは?変更方法(GVA TECH/2026年9月16日 確認)
株数の決め方でよく聞かれること

- 1株の金額を1円にできますか?
- できます。法律上の制限はありません。ただし資本金100万円なら100万株になり、株数が多くなりすぎて管理が煩雑になります。株式会社の会社設立では、1万円か1,000円が扱いやすい水準です。
- 発行可能株式総数を1万株にしても問題ありませんか?
- 非公開会社であれば問題ありません。上限の定めがないためです。ただし極端に大きい数にしても実益はありません。設立時発行株式数の4倍から10倍程度が実務の目安です。
- 設立時に発行可能株式総数まで発行してもよいですか?
- できますが、増資のたびに定款変更が必要になります。会社設立の時点で全部発行してしまうと、将来の柔軟性がなくなります。枠を残しておくのが一般的です。
- 株式分割をすると資本金は増えますか?
- 増えません。株式分割は1株を複数株に分けるだけで、資本金の額は変わりません。ただし発行済株式の総数が増えるため、発行可能株式総数の枠を超えないか確認が必要です。
質問に共通しているのは、枠と実際の発行数の関係です。株式会社の会社設立では、発行可能株式総数は将来の上限、発行済株式の総数は今の実数です。この二つを分けて考えてください。
出典このセクションの出典:弥生|株式・発行可能株式総数とは?(弥生株式会社/2026年9月16日 確認)
まとめ|資本金から株数を導き、枠に余裕を持たせる

株式会社の会社設立で株数を決める手順は四つです。資本金の額を決め、1株の金額を決め、設立時発行株式数を出し、発行可能株式総数を決める。
- 資本金の額を決める運転資金・許認可の要件・税の扱いで。1,000万円未満が一般的。
- 1株の金額を決める1万円か1,000円が扱いやすい。割り切れる数に。
- 設立時発行株式数を出す資本金 ÷ 1株の金額。登記簿に載る数字。
- 発行可能株式総数を決める設立時発行株式数の4〜10倍程度。非公開会社なら上限なし。
発行可能株式総数は、将来発行できる株式の上限です。枠の範囲内なら定款変更なしで増資できるため、余裕を持たせておくと後の手続が軽くなります。
非公開会社では上限の定めがありません。公開会社では設立時発行株式数の4倍までという制限があります。会社設立で非公開会社にするなら、自由に決められます。
複数の発起人がいる場合は、各人が引き受ける株式の数も配分します。この比率が持株比率になり、議決権の比率になります。
発行可能株式総数も発行済株式の総数も登記事項です。定款に定め、登記すべき事項にも記載してください。会社設立で書き漏らすと登記簿に反映されません。
なお、この記事の内容は2026年9月16日時点の会社法にもとづきます。条文や取扱いは改正されることがあるため、実際の手続の前に法務局の公式情報でご確認ください。
出典このセクションの出典:GVA法人登記|発行可能株式総数とは?変更方法(GVA TECH/2026年9月16日 確認)
株数が決まったら、定款と登記すべき事項に書いてください
発行可能株式総数と発行済株式の総数は、どちらも登記事項です。定款に定め、登記すべき事項にも記載します。書き漏らすと登記簿に反映されません。
余裕を持って設定しておけば、将来の増資で定款変更をせずに済みます。後から変えるには株主総会の特別決議と変更登記が必要で、登録免許税もかかります。株式会社の会社設立の時点で、数年先を見据えて決めてください。
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