司法書士に頼むべき人・自分で進めてよい人|株式会社設立の依頼を決める5つの基準
報酬の額で決めると判断を誤ります。手続が複雑になる条件に当てはまるかどうかで、依頼すべきかが決まります。5つの基準で確かめます。

この記事は、報酬を払う価値があるかを判断したい人のためのものです
株式会社の会社設立を司法書士に頼むと6万円から10万円程度かかります。この金額を払う価値があるかどうかは、手続がどれくらい複雑になるかで決まります。
ひとりで、金銭のみを出資して、取締役1名の株式会社を作るなら、手続は最も単純です。一方、発起人が複数いたり、現物出資があったり、取締役会を置いたりすると、書類の数も判断も一気に増えます。この記事では、依頼すべきかを判断する5つの基準を整理します。内容は2026年9月16日時点の一次情報にもとづきます。
判断は「報酬の額」ではなく「手続の複雑さ」で

株式会社の会社設立を司法書士に依頼するかどうかを、報酬の額だけで判断すると誤ります。見るべきは自分の場合の手続がどれくらい複雑になるかです。
ひとりで、金銭のみを出資して、取締役1名の株式会社を作る。この条件なら手続は最も単純で、法務局の記載例をほぼそのまま使えます。自分で進めても差し戻される可能性は低くなります。
一方、発起人が複数いる、現物出資がある、取締役会を置く、といった条件が加わると、書類の数も判断も増えます。記載例をそのまま使えなくなり、自分で判断する場面が出てきます。
つまり、6万円から10万円という報酬が高いか安いかは、条件によって変わります。単純な会社設立なら高く感じ、複雑な会社設立なら安く感じるということです。
資本金の額そのものは、手続の複雑さにはあまり影響しません。1円でも1,000万円でも、払込みの手順も登記申請書の書き方も同じです。株式会社の会社設立で難易度を左右するのは、金額ではなく人と財産の構成です。
以下では、手続が複雑になる条件を5つ挙げます。当てはまる数が多いほど、依頼する価値が高くなります。
なお、当てはまらないからといって依頼してはいけないわけではありません。時間を買うという判断も合理的です。あくまで必要性の目安として使ってください。

出典このセクションの出典:ベンチャーサポート|司法書士に依頼すべき人・自分で進めてよい人(ベンチャーサポート/2026年9月16日 確認)
基準1|発起人が複数いるか

発起人がひとりなら、株式会社の会社設立の手続は単純です。定款に自分の氏名と住所を書き、自分の口座に払い込み、自分の印鑑証明書を添えるだけです。
発起人が複数いると、各発起人が引き受ける設立時発行株式の数と払込金額を定款に記載する必要があります。それぞれが自分の名義で払い込み、通帳に誰がいくら入れたかが分かる形にします。
印鑑証明書も全員分が必要です。遠方にいる人がいれば取得に時間がかかり、3か月の期限との兼ね合いも出てきます。
さらに重要なのが持株比率の設計です。出資額の比率がそのまま議決権の比率になり、会社の意思決定を誰が握るかを決めます。50対50にすると、意見が割れたときに何も決められなくなります。
この設計は手続の問題ではなく、事業の将来に関わる判断です。株式会社の会社設立の時点で決めておかないと、後から変えるには株式の譲渡か新株の発行が必要になります。
出資額に差をつけるかどうかも、この段階で決めます。均等に出すと持株比率も均等になり、資本金を誰がどれだけ負担したかが議決権に直結します。株式会社の会社設立では、出資と経営を別に設計できるため、働く人と出す人を分ける選択もあります。
発起人が複数いる場合は、手続の代行だけでなく、設計の相談という意味でも専門家に話を聞く価値があります。司法書士のほか、株主間の取り決めについては弁護士が相談先になります。
出典このセクションの出典:ベリーベスト法律事務所|持株比率とは?注意すべき持株比率ライン(ベリーベスト法律事務所/2026年9月16日 確認)
基準2|現物出資があるか

資本金は金銭で払い込むのが基本ですが、パソコン、車両、不動産といった財産を出資することもできます。これを現物出資といいます。
現物出資があると、株式会社の会社設立の手続が一気に複雑になります。その財産にいくらの価値があるのかを示す必要があり、価額が適正でなければ後から責任を問われます。
一定額を超える場合は、裁判所が選任する検査役の調査が必要になります。時間も費用もかかるため、実務では調査が不要な範囲に収めることが多くあります。
検査役の調査が不要な場合でも、設立時取締役による調査報告書と、その附属書類が必要です。財産の価額を示す資料も添えます。法務局の記載例にも様式がありますが、判断を伴う部分が残ります。
実務では、現物出資を避けて、会社設立の後に個人から会社へ売買するという形が選ばれることが多くあります。この方法なら手続が単純になります。
なお、現物出資した財産の価額は資本金に組み入れられます。資本金の額が増えれば登録免許税や定款認証の手数料の区分にも影響するため、株式会社の会社設立では金銭出資と現物出資の割合も設計の対象になります。
どちらを選ぶかで税務上の扱いも変わります。現物出資を検討している場合は、司法書士と税理士の両方に相談するのが確実です。
出典このセクションの出典:法務局|株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立)(法務局/2026年9月16日 確認)
基準3|取締役会や監査役を置くか

取締役1名・監査役なしの株式会社は、機関設計として最も単純です。法務局の記載例も、この形を前提にしたものが用意されています。
取締役会を置くと、取締役3名以上と、原則として監査役が必要になります。添付書類は全員分の就任承諾書と印鑑証明書、監査役については本人確認証明書が加わります。
定款の条文も増えます。取締役会の招集手続、決議の方法、代表取締役の選定方法などを定める必要があります。テンプレートを流用すると条文の整合性が崩れやすい部分です。
代表取締役の選定を証する書面も必要になります。取締役が1名なら当然に代表取締役になりますが、複数いる場合は選定の手続と書面が要ります。
また、定款に取締役会を置く旨の記載があると、定款認証の1万5,000円の軽減区分から外れます。会社設立の費用の面でも影響が出ます。
機関設計を複雑にする予定があるなら、定款の作成だけでも専門家に依頼する価値があります。条文の整合性を第三者に見てもらえるためです。
出典このセクションの出典:日本監査役協会|機関設計の図解(日本監査役協会/2026年9月16日 確認)
基準4|日程に余裕がないか

取引先との契約開始日、許認可の申請時期、決算期の都合。株式会社の会社設立の日程が外から決まっている場合があります。
自分で進めると、書類の不備で差し戻される可能性があります。多くは補正で直せますが、取下げになると設立日が後ろにずれます。会社の成立日は登記を申請した日なので、再申請すればその日が成立日になります。
公証役場の事前確認も、自分でやると往復が増えがちです。一度で通ることのほうが少なく、二往復三往復すると1週間以上かかることもあります。
司法書士に依頼すれば、こうした往復が減ります。定款の内容も書類の形式も経験にもとづいて作られるため、差し戻しの可能性が下がります。
日程に余裕がある場合は、自分で進めて時間をかけても問題ありません。逆に、設立日が決まっていて動かせないなら、確実さを買うという判断が合理的です。
許認可が絡む場合は、さらに余裕が必要です。事業目的の文言を所管官庁に確認し、資本金の額が要件を満たすかを調べてから定款を作ります。ここを省くと、株式会社の会社設立の後に目的変更や増資の登記が発生します。
なお、急ぐ場合でも事業目的の確認と資本金の額の検討は省かないでください。ここを飛ばすと、設立後の変更登記で3万円以上かかります。
出典このセクションの出典:freee|会社設立は最短どれくらいの期間で完了する?(freee株式会社/2026年9月16日 確認)
基準5|設立後の登記を自分で扱う気があるか

株式会社の登記は、会社設立のときだけではありません。取締役の任期満了ごとの重任登記、本店移転、商号変更、増資。設立後も繰り返し発生します。
自分で会社設立を経験しておけば、その後の登記も自分でできるようになります。手続の流れが分かっているので、二度目からは早く進みます。
逆に、登記は専門家に任せて本業に集中したいと考えるなら、会社設立の時点から司法書士との関係を作っておくほうが合理的です。任期満了の時期を管理してもらえる事務所もあります。
一人で株式会社を運営する場合、期限を教えてくれる人がいません。役員の任期を最長10年にすると、10年後に重任登記を忘れるリスクがあります。外部に相談先を持つことの価値は、設立時の報酬額だけでは測れません。
増資の登記も設立後によく発生します。許認可の要件を満たすため、あるいは信用のために資本金を増やす場面です。増加額の0.7%(最低3万円)の登録免許税がかかるため、株式会社の会社設立の時点で必要額を見込んでおくほうが安く済みます。
どちらを選ぶかは、自分がどこまで手続に関わりたいかによります。資本金の額や機関設計といった設計の相談も含めて付き合いたいなら、依頼する意味は大きくなります。
なお、税務については税理士、社会保険については社会保険労務士が相談先になります。司法書士が扱えるのは登記の領域なので、役割を分けて考えてください。
出典このセクションの出典:マネーフォワード|役員(取締役や監査役)の任期は10年?(マネーフォワード/2026年9月16日 確認)
5つの基準で判断する

5つの基準を振り返ります。株式会社の会社設立で、当てはまる数が多いほど手続が複雑になり、依頼する価値が高くなります。
- 発起人が複数いる(持株比率の設計が必要)
- 現物出資がある(価額の証明と調査報告書が必要)
- 取締役会や監査役を置く(添付書類と条文が増える)
- 設立日が決まっていて動かせない(差し戻しを避けたい)
- 設立後の登記も専門家に任せたい(長い付き合いになる)
ひとつも当てはまらないなら、自分で進めても問題ありません。ひとりで、金銭のみを出資して、取締役1名の株式会社を作る。この条件なら記載例をほぼそのまま使えます。
ひとつでも当てはまるなら、その部分だけでも相談してみてください。全部を任せる必要はありません。定款の作成だけ、書類のチェックだけという依頼もできます。
特に、発起人が複数いる場合と現物出資がある場合は、手続だけでなく設計の判断が必要になります。後から変えるのが難しい部分なので、会社設立の前に相談する価値が高くなります。
逆に、日程に余裕があり、条件が単純なら、自分で進めて手続を理解しておくという選択も十分に合理的です。
出典このセクションの出典:司法書士法人まちたま|自分でやる場合と依頼した場合の費用の比較(司法書士法人まちたま/2026年9月16日 確認)
依頼の判断でよく聞かれること

- 途中まで自分でやって、行き詰まったら頼めますか?
- 頼めます。定款まで作ったが認証で止まっている、登記申請書が書けないといった段階からの依頼も受けてもらえます。ただし作った書類を作り直すことになると、費用が変わる場合があります。
- 相談だけでも受けてもらえますか?
- 初回相談を無料にしている事務所もあります。株式会社の会社設立について、資本金の額や機関設計の考え方を聞いたうえで、自分でやるか依頼するかを決めるという使い方もできます。
- 税理士に頼めば登記もやってもらえますか?
- 登記申請の代理は司法書士の業務です。会計事務所が設立支援を行う場合も、登記そのものは提携する司法書士が行うか、自分で申請する形になります。見積もりの段階で誰が何をするのかを確認してください。
- 合同会社なら自分でできますか?
- 定款認証がないぶん、株式会社より手続は単純です。ただし発起人ならぬ社員が複数いる場合や、現物出資がある場合は同じように複雑になります。会社形態だけで判断せず、条件で判断してください。
質問に共通しているのは、全部か無かで考えているという点です。株式会社の会社設立は工程が分かれているため、途中からでも、一部だけでも依頼できます。迷ったら相談してみるのが早道です。
出典このセクションの出典:ベンチャーサポート|司法書士に依頼すべき人・自分で進めてよい人(ベンチャーサポート/2026年9月16日 確認)
まとめ|条件が単純なら自分で、複雑なら相談を

株式会社の会社設立を司法書士に依頼するかどうかは、報酬の額ではなく手続の複雑さで判断してください。5つの基準に当てはまる数が多いほど、依頼する価値が高くなります。
- 発起人が複数持株比率の設計が必要。後から変えるのが難しい。
- 現物出資がある価額の証明と調査報告書。検査役の調査が必要な場合も。
- 取締役会や監査役を置く添付書類が増え、条文の整合性の確認が必要。
- 日程に余裕がない差し戻しで設立日が後ろにずれるリスクを避けたい。
- 設立後も任せたい重任登記や本店移転。長い付き合いになる。
ひとつも当てはまらないなら、自分で進めても問題ありません。ひとりで、金銭のみを出資して、取締役1名の株式会社を作る条件なら、法務局の記載例をほぼそのまま使えます。
ひとつでも当てはまるなら、その部分だけでも相談してみてください。定款の作成だけを依頼すれば報酬は3万円から5万円程度で、電子定款により収入印紙4万円がかからないため、実質的な負担は小さくなります。
資本金の額や事業目的は、誰に頼んでも自分で決める部分です。税務の観点からの判断が必要な場合は税理士、登記の観点は司法書士というように、相談先を分けて考えてください。
なお、この記事の内容は2026年9月16日時点の一次情報と一般的な相場にもとづきます。報酬は事務所によって幅があるため、実際の依頼前に複数から見積もりを取ってください。当サイトは特定の依頼先を推奨するものではありません。
出典このセクションの出典:司法書士法人まちたま|自分でやる場合と依頼した場合の費用の比較(司法書士法人まちたま/2026年9月16日 確認)
基準に当てはまらないなら、自分で進めても大丈夫です
5つの基準のどれにも当てはまらないなら、株式会社の会社設立は自分で進めても問題ありません。法務局が様式と記載例を公開し、公証役場が定款の事前確認に応じてくれます。
ひとつでも当てはまるなら、その部分だけでも相談してみてください。全部を任せる必要はなく、定款の作成だけ、書類のチェックだけという依頼もできます。資本金の額や機関設計で迷いがあるなら、税理士や司法書士に話を聞いてから決めるほうが、結果的に安く済むこともあります。
この記事は、株式会社の会社設立を決めるうえで役に立ちましたか?
押しても個人が特定される情報は送信していません。判断に迷う論点があれば、法務局・公証役場や司法書士・税理士にもあわせてご確認ください。