事業の型から資本金を決める|在庫なし・在庫あり・店舗ありの三つで必要額は変わる
資本金の目安は「固定費の3〜6か月分」と言われますが、事業の型で中身が違います。三つの型に分けて、実際に試算してみます。

この記事は、目安の数字を自分の事業に当てはめたい人のためのものです
資本金は固定費の3か月から6か月分。よく示される目安ですが、自分の事業の固定費がいくらなのかが分からないと当てはめようがありません。業種によって、そもそも何が固定費なのかも違います。
この記事では、事業を三つの型に分けて、株式会社の会社設立に必要な資本金を試算します。在庫を持たない事業、仕入れがある事業、店舗を構える事業。自分に近い型を見れば、必要額の見当がつきます。金額は2026年9月16日時点の一般的な水準を前提にした試算です。
資本金の必要額は事業の型で決まる

株式会社の会社設立で資本金の額を決めるとき、自分の事業が何にお金を使うのかを先に整理する必要があります。業種によって、かかる費用の構造がまったく違うためです。
株式会社の事業のうち在庫を持たない型では、お金は主に固定費として出ていきます。通信費、ソフトの利用料、外注費。金額は小さく、毎月一定です。
仕入れがある事業では、売上より先に仕入れの支払いが来ます。売れてから入金されるまでの間、資金が寝ることになります。
店舗を構える事業では、開業前にまとまった支出があります。敷金、内装、設備。これらは会社の口座から出ていきます。
この違いを無視して「固定費の3か月分」と当てはめると、店舗型では足りず、在庫なし型では多すぎることになります。型に応じて計算の仕方を変える必要があります。
以下では、三つの型それぞれについて、何を数えるべきかと、試算の例を示します。

出典このセクションの出典:辻・本郷 税理士法人|会社設立の資本金の決め方とは?(辻・本郷 税理士法人/2026年9月16日 確認)
型1|在庫を持たない事業|固定費の数か月分

受託開発、コンサルティング、デザイン、士業といった事業は、在庫を持ちません。株式会社の会社設立で必要な資本金も、相対的に少なくて済みます。
この型の株式会社での主な支出は固定費です。通信費、サーバー代、会計ソフトの利用料、保険料。自宅で行うなら家賃も発生しません。月に数万円という水準になることもあります。
ただし、売上の入金までの期間は考慮が必要です。請求から入金まで1、2か月かかるのが通常で、その間も支出は続きます。
試算してみます。固定費が月8万円、入金まで2か月、余裕を見て4か月分とすると32万円。ここに初期の備品(パソコン、ソフトなど)を20万円と見込めば、合計52万円になります。
この水準なら、資本金100万円未満に収まります。定款認証の手数料も下がる区分なので、株式会社の会社設立の費用も抑えられます。
この型では、売上の入金サイクルが読みやすいという利点もあります。既存の取引先を引き継いで株式会社の会社設立をする場合、いつ・いくら入るかが分かっているので、必要額を正確に出せます。まったく新規に始める場合は、入金が始まるまでの期間を長めに見てください。
なお、外注を多く使う事業では、外注費の支払いが先に来ることがあります。その場合は変動費として上乗せしてください。

出典このセクションの出典:GMOあおぞらネット銀行|会社設立に必要な要件は?(GMOあおぞらネット銀行/2026年9月16日 確認)
型2|仕入れがある事業|資金が寝る期間を見る

物販、卸、製造といった事業では、仕入れの支払いが売上の入金より先に来ます。株式会社の会社設立で必要な資本金は、このずれを埋める額が中心になります。
株式会社が仕入れて1か月後に支払い、売れて2か月後に入金される場合。仕入れから入金まで3か月あり、その間の仕入れ代金を立て替え続けることになります。
月の仕入れ額が50万円なら、3か月分で150万円が資金として寝ます。これに固定費が加わります。
試算してみます。月の仕入れ50万円×3か月分で150万円、固定費が月15万円で4か月分の60万円。合計210万円になります。
この水準では資本金100万円未満は難しく、300万円未満の区分になります。定款認証の手数料は4万円です。会社設立の費用より、資金繰りを優先する場面です。
在庫を持つということは、売れ残りのリスクも抱えるということです。想定どおりに売れなければ、仕入れ代金が回収できないまま次の仕入れが来ます。株式会社の会社設立で資本金を決めるときは、計画どおりに売れなかった場合も想定して余裕を持たせてください。
なお、仕入れの支払条件を交渉できれば、必要額は下がります。掛けで仕入れて支払いを後ろにできれば、資金が寝る期間が短くなります。設立前に取引条件を確認しておいてください。
出典このセクションの出典:辻・本郷 税理士法人|会社設立の資本金の決め方とは?(辻・本郷 税理士法人/2026年9月16日 確認)
型3|店舗を構える事業|開業前の投資が大きい

飲食、小売、サロンといった店舗型の事業では、開業前にまとまった支出があります。株式会社の会社設立で必要な資本金も、桁が変わります。
店舗型の株式会社での主な支出は、物件の敷金・保証金、内装工事費、厨房や什器などの設備、初期の仕入れ、そして開業前の家賃です。物件を借りてから開業までの間も家賃はかかります。
試算してみます。敷金・保証金100万円、内装工事300万円、設備200万円、初期仕入れ50万円、開業前の家賃2か月分で40万円。ここまでで690万円です。
さらに、開業後の運転資金として固定費の3か月分を見込みます。家賃・人件費・光熱費で月80万円なら240万円。合計で930万円になります。
この水準では、資本金1,000万円の線に接近します。消費税の免税を取りたいなら、1,000万円未満に収める必要があります。
店舗型では、開業の準備期間も長くなります。物件探し、内装工事、設備の搬入、採用と研修。株式会社の会社設立から開業まで数か月かかることも珍しくなく、その間も家賃と人件費が出ていきます。この期間の資金も見込んでおいてください。
超える場合は、一部を融資で調達するという選択もあります。日本政策金融公庫の創業融資や自治体の制度融資を使えば、資本金を1,000万円未満に抑えたまま資金を確保できます。
出典このセクションの出典:GMOあおぞらネット銀行|会社設立に必要な要件は?(GMOあおぞらネット銀行/2026年9月16日 確認)
融資と組み合わせて考える

株式会社に必要な資金のすべてを資本金で用意する必要はありません。株式会社の会社設立の後、融資で調達するという方法があります。
日本政策金融公庫の新規開業資金や、自治体の制度融資が代表的です。会社設立の直後でも申し込めますが、法人として申し込むには登記事項証明書が必要です。
融資の審査では、自己資金の割合が見られることが多くあります。資本金として入れた額は自己資金として評価されるため、資本金を薄くしすぎると融資でも不利になることがあります。
また、特定創業支援等事業の証明を受けていると、創業関連保証の特例や融資制度の要件緩和が受けられることがあります。登録免許税の軽減とあわせて確認する価値があります。
株式会社の会社設立の直後は、まだ決算書がありません。金融機関が見るのは事業計画と代表者の経歴、そして自己資金です。資本金として入れた額が自己資金の裏づけになるため、融資を予定しているなら、ある程度の額を入れておくほうが話が進みやすくなります。
融資を前提にする場合、事業計画書が必要になります。売上の見込み、費用の内訳、返済計画を数字で示すことになるため、資本金の額もこの計画のなかで決まってきます。
つまり、資本金の額は単独で決めるものではなく、資金調達全体の設計の一部です。融資を使う予定があるなら、金融機関の創業相談で話を聞いてから決めるのが確実です。
出典このセクションの出典:中小企業庁(中小企業庁/2026年9月16日 確認)
型ごとの試算をまとめる

株式会社の三つの型の試算をまとめます。株式会社の会社設立で、自分に近い型を見れば必要額の見当がつきます。
| 型 | 主な支出 | 必要額の目安 | 税・手数料の区分 |
|---|---|---|---|
| 在庫なし型 | 固定費・初期の備品 | 50万〜150万円 | 100万円未満なら定款認証が下がる |
| 仕入れあり型 | 仕入れと入金のずれ | 200万〜500万円 | 300万円以上なら定款認証5万円 |
| 店舗型 | 敷金・内装・設備 | 700万〜1,500万円 | 1,000万円未満に収めたい |
在庫なし型では、100万円未満に収まることが多くなります。定款認証の手数料も下がるため、会社設立の費用も抑えられます。
仕入れあり型では、300万円前後になることが多いでしょう。定款認証は5万円になりますが、資金繰りを優先すべき場面です。
店舗型では、1,000万円の線に接近します。消費税の免税を取りたいなら、融資との組み合わせを検討してください。
同じ業種でも、自宅で始めるか事務所を借りるかで桁が変わります。株式会社の会社設立にあたっては、まず自分の事業がどの型に近いかを決め、そのうえで固定費と初期投資を具体的に書き出してみてください。
いずれも試算例であり、実際の額は立地、規模、既存顧客の有無で変わります。自分の数字を入れて計算してみてください。
出典このセクションの出典:弥生|資本金の平均額はどれくらい?(弥生株式会社/2026年9月16日 確認)
試算した額を調整する

事業の型から必要額が出たら、最後に税と手数料の境目で調整します。株式会社ならではの区分なので、合同会社とは判断の材料が違います。株式会社の会社設立で意識すべき境目は二つです。
ひとつは1,000万円です。これを超えると設立1期目から消費税の納税義務が生じ、法人住民税の均等割の区分も上がります。超えそうなら、融資との組み合わせを検討してください。
もうひとつは100万円です。未満であれば定款認証の公証人手数料が3万円(軽減要件を満たせば1万5,000円)になります。100万円以上300万円未満では4万円です。
たとえば試算が95万円なら、そのまま100万円未満に収めます。105万円なら、95万円に抑えるか、105万円のまま4万円を払うかの判断になります。
差は2万5,000円程度です。運転資金が10万円減ることのほうが痛いなら、105万円のままにすべきです。手数料のために運転資金を削らないでください。
調整の順番も決めておくと迷いません。まず必要額を出し、次に1,000万円を超えていないかを見て、最後に100万円の境目を確認する。株式会社の会社設立では、この順で見れば税の不利益を避けながら手数料も抑えられます。
最後に、きりのよい額に丸めます。定款・払込証明書・登記申請書の三箇所に同じ数字を書くため、管理しやすい額のほうが実務は楽になります。
出典このセクションの出典:さきがけ税理士法人|消費税の納税義務~資本金1000万円未満・超(さきがけ税理士法人/2026年9月16日 確認)
事業の型と資本金についてよく聞かれること

- フリーランスから法人化する場合はどう考えますか?
- すでに売上があるなら、入金のサイクルが分かっているはずです。その期間を賄える額を入れてください。株式会社の会社設立の直後も取引が続くなら、在庫なし型に近い水準で足りることが多くあります。
- 複数の事業をやる場合は?
- それぞれの事業で必要な額を出し、合計します。事業の立ち上がり時期がずれるなら、先に始めるほうの必要額を優先してもかまいません。資本金が足りなくなれば増資もできますが、登記費用がかかります。
- 試算より少なくても始められますか?
- 始められます。不足分は代表者が立て替えることになり、役員借入金として決算書に残ります。ただし立替が続くと事務の手間が増え、決算書の見え方も悪くなります。
- 設備をリースにすれば資本金は減らせますか?
- 初期の支出を抑えられるため、必要な資本金は下がります。ただし毎月のリース料が固定費として増えます。株式会社の会社設立の時点では、初期投資と毎月の負担のどちらを取るかという判断になります。
質問に共通しているのは、いつお金が出ていくかという点です。株式会社の会社設立で資本金を決めるときは、金額だけでなくタイミングも見てください。先に出ていく支出が多い事業ほど、厚い資本金が必要になります。
出典このセクションの出典:辻・本郷 税理士法人|会社設立の資本金の決め方とは?(辻・本郷 税理士法人/2026年9月16日 確認)
まとめ|型を見極めてから、金額を試算する

株式会社の資本金の額は、事業の型によって桁が変わります。在庫を持たない事業なら50万円から150万円、仕入れがある事業なら200万円から500万円、店舗型なら700万円以上が一つの目安です。
在庫なし型
固定費と初期の備品。100万円未満に収まることが多い。
仕入れあり型
仕入れから入金までのずれを埋める額。300万円前後。
店舗型
敷金・内装・設備。1,000万円の線に接近する。
融資との組み合わせ
全部を資本金で賄う必要はない。自己資金の割合は見られる。
試算が出たら、税と手数料の境目で調整します。1,000万円を超えないこと、可能なら100万円未満に収めること。ただし手数料のために運転資金を削らないでください。
店舗型で1,000万円を超えそうなら、融資との組み合わせを検討してください。日本政策金融公庫の創業融資や自治体の制度融資を使えば、資本金を抑えたまま資金を確保できます。
なお、この記事の試算はあくまで例です。同じ業種でも立地、規模、既存顧客の有無で必要額は変わります。会社設立の前に事業計画を作り、自分の数字で計算してみてください。
税制や融資制度は改定されることがあります。実際の判断にあたっては、国税庁・日本政策金融公庫・自治体の最新情報をご確認ください。資金計画は、税理士や金融機関の創業相談もあわせて使うことをおすすめします。
出典このセクションの出典:GMOあおぞらネット銀行|会社設立に必要な要件は?(GMOあおぞらネット銀行/2026年9月16日 確認)
試算が出たら、税の境目に収まるかを確認してください
事業の型から必要額が出たら、最後に税の境目を確認します。1,000万円未満に収まっているか、100万円未満にできるか。この二つで最終的な額が決まります。
試算はあくまで目安です。同じ業種でも、立地や規模、既存顧客の有無で必要額は変わります。事業計画を作って数字を入れてみるのが確実です。判断に迷う部分は、税理士や金融機関の創業相談も使ってみてください。
この記事は、株式会社の会社設立を決めるうえで役に立ちましたか?
押しても個人が特定される情報は送信していません。判断に迷う論点があれば、法務局・公証役場や司法書士・税理士にもあわせてご確認ください。