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株式会社設立の教科書 条件・費用・資本金から機関設計まで
株式会社設立 とは 全体像

株式会社を作る前に決めること9項目|商号・事業目的から決算期まで順番に片づける

定款は、決めたことを書き写す紙にすぎません。書き始める前に埋めておくべき9項目を、決める順番と、後から変えるときにかかる費用の観点で並べました。

公開 2026年8月22日 確認日 2026年9月16日 約10分で読めます 本文 約6,000字

この記事は、定款のテンプレートを前にして手が止まっている人のためのものです

会社設立の解説を読んで定款の雛形をダウンロードしたものの、空欄を埋められずに止まっている。株式会社を作ろうとしている人がいちばん多く詰まるのがここです。埋まらないのは書き方が分からないからではなく、まだ決めていないからです。

この記事では、定款を書く前に決めておくべき9項目を、決める順番に並べます。それぞれについて、何を基準に決めるのか、後から変えるといくらかかるのかを添えました。資本金のように費用に直結する項目は先に、公告方法のように後回しにできる項目は後に置いています。

SECTION 01決める順番は「お金と場所」が先、「見た目」は後

決める順番は「お金と場所」が先、「見た目」は後

株式会社の会社設立で決めることは9つあります。順番に意味があり、後の項目が前の項目の答えに依存しているため、思いついた順に決めると手戻りが起きます。

たとえば資本金の額が決まらないと、登録免許税も定款認証手数料も出ません。本店所在地が決まらないと、どの法務局に出すのかも、地方税の届出先も決まりません。逆に、公告方法や印鑑の意匠は最後でも困りません。

9項目を決める順番
本店と資本金が先。この2つが決まれば、株式会社の会社設立にかかる費用の見積もりが出せます。

以下では、この順番に沿って9項目を見ていきます。それぞれの項目に「何を基準に決めるか」と「後から変えるとどうなるか」を添えました。会社設立の前にこの表を埋めておけば、定款作成は作業になります。

なお、9項目のうち定款の絶対的記載事項にあたるのは、目的・商号・本店の所在地・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額・発起人の氏名または名称および住所の5つです。残りは定款に書かなくても会社設立はできますが、書かなければ別の手続が必要になったり、不利な扱いになったりします。

出典このセクションの出典:契約ウォッチ|株式会社の設立とは?発起人・資本金や手続きの流れ(契約ウォッチ/2026年9月16日 確認)

SECTION 02本店所在地|自宅でもよいが、後で動かすと費用がかかる

本店所在地|自宅でもよいが、後で動かすと費用がかかる

本店所在地は、会社の住所として登記簿に載ります。自宅を本店にすることも、レンタルオフィスやバーチャルオフィスを使うこともできます。株式会社の会社設立にあたって、住所の種類そのものに法律上の制限はありません。

ただし、賃貸物件では契約上、法人登記が認められていないことがあります。大家や管理会社に確認せずに登記すると、契約違反になる可能性があります。登記の可否は法律ではなく契約の問題なので、先に確認しておいてください。

定款には市区町村まで書く手もある

定款の本店欄は、最小行政区画(市区町村、東京23区なら区)まででも有効です。番地まで書くと、同じ市内で引っ越しただけでも定款変更が必要になります。市区町村までにしておけば、同一市区町村内の移転では定款を変えずに済みます。登記簿には番地まで載るので、移転登記自体は必要です。

本店を動かしたときにかかる登録免許税(2026年9月16日確認)
移転先 登録免許税 定款変更
同一法務局の管轄内 3万円 定款に番地まで書いていれば必要
別の法務局の管轄へ 6万円(新旧2庁分) 同上

登記できる住所かどうかを先に確かめる

自宅マンションを本店にするとき、管理規約で「専ら住宅として使用する」と定められていることがあります。株式会社の登記そのものは受け付けられますが、規約違反を問われる可能性は残ります。バーチャルオフィスを使う場合も、同じ住所に多数の株式会社が登記されていることを理由に、銀行口座の開設で追加の説明を求められることがあります。

本店は地方税の納付先も決めます。法人住民税の均等割は自治体ごとに額が違い、赤字でもかかります。会社設立の段階では小さな差に見えますが、毎年続く支出なので、選択肢があるなら比べておく価値はあります。

出典このセクションの出典:法務局|商業・法人登記の手続案内(法務局/2026年9月16日 確認)

SECTION 03資本金の額|費用と税の両方に効く、最も影響の大きい数字

資本金の額|費用と税の両方に効く、最も影響の大きい数字

資本金は、発起人が会社に払い込むお金です。2006年施行の会社法で最低資本金制度が廃止され、法律上は1円から株式会社の会社設立ができます。ただし額は登記簿に載り、取引先や金融機関、求職者から見える情報になります。

金額を決めるときに見る軸は4つあります。運転資金として何か月分を入れるか、許認可の要件を満たすか、消費税の扱いをどうするか、対外的な見え方をどうするか。このうち税の扱いは境目がはっきりしています。

資本金の金額で変わる3つの境目
会社設立の費用だけを見て小さくすると、運転資金が足りなくなります。三つの境目を意識しながら決めるのが実際的です。

少なすぎる資本金が招くこと

資本金1円の株式会社は法律上まったく問題なく成立します。ただし、設立直後に会社の口座残高が0円に近い状態になるため、家賃も仕入れも代表者個人の立替から始まることになります。立替は会社から見れば借入金で、後で精算する手間が増えます。会社設立の費用そのものも会社の経費にできる範囲が限られるため、少なくとも当面の支出をまかなえる額は入れておくのが実際的です。

後から資本金を増やす(増資する)ことはできますが、変更登記が必要で、増加額の0.7%(最低3万円)の登録免許税がかかります。減らす(減資する)場合は債権者保護の手続も要るため、もっと手間がかかります。会社設立の時点で動かさずに済む額を選ぶのが結局は安上がりです。

出典このセクションの出典:辻・本郷 税理士法人|会社設立時の資本金はいくらが適切か(辻・本郷 税理士法人/2026年9月16日 確認)

SECTION 04発起人と出資額|誰がいくら出すかが、そのまま持株比率になる

発起人と出資額|誰がいくら出すかが、そのまま持株比率になる

発起人は、定款に署名し、資本金を出し、設立時の役員を決める人です。人数に制限はなく、1人でも構いません。ひとりで株式会社の会社設立をする場合は、発起人・株主・取締役をすべて自分が兼ねます。

複数人で始める場合、出資額の比率がそのまま持株比率になります。持株比率は株主総会の議決権の比率であり、会社の意思決定を誰が握るかを決めます。友人と半分ずつ出して五分五分にすると、意見が割れたときに何も決められなくなります。

持株比率でできることの目安
議決権の比率 できること
過半数 普通決議を単独で可決できる(取締役の選任など)
3分の2以上 特別決議を単独で可決できる(定款変更など)
3分の1超 特別決議を単独で阻止できる

出資はしていないが会社を手伝う人がいる場合、株式を渡すかどうかは慎重に考える必要があります。株式はいったん渡すと、本人の同意なしには取り戻せません。関係が変わったときに、経営に関与していない人が議決権を持ち続けることになります。株式会社の会社設立の段階では、まず自分の持分を厚くしておき、貢献に対しては役員報酬や賞与で報いるほうが後の自由度が残ります。

出資比率を後から変えるには、株式の譲渡か新株の発行が必要です。譲渡には税務上の評価の問題がつきまとい、当事者の合意も要ります。会社設立の時点で誰が主導権を持つのかを決めておくほうが、関係を壊さずに済みます。

お金を出す人と働く人は別に設計できる

出資はしないが役員として働く、という形も取れます。出資比率と役員報酬は別の仕組みなので、貢献に報いる方法は株式だけではありません。株式会社の会社設立の段階で分けて考えておくと、選択肢が広がります。

出典このセクションの出典:ベリーベスト法律事務所|持株比率とは?注意すべき持株比率ライン(ベリーベスト法律事務所/2026年9月16日 確認)

SECTION 05機関設計|取締役を何人置くか、取締役会を置くか

機関設計|取締役を何人置くか、取締役会を置くか

株式会社が必ず置かなければならないのは、株主総会と取締役です。それ以外の機関は定款で定めたときに置かれます。つまり取締役1人だけの株式会社が最小の構成で、会社設立の実務ではこれが最もよく選ばれます。

取締役会を置くと、取締役は3人以上必要になり、加えて原則として監査役も必要になります。役員が合計4人以上いる前提の設計です。人を集められないうちに取締役会を置くと、辞任や任期満了のたびに人数を満たせなくなります。

機関設計の組み合わせと必要人数
ひとりで株式会社の会社設立をするなら、いちばん上の行を選ぶことになります。

監査役を置く選択もあります。取締役会を置かない株式会社でも、定款で定めれば監査役を設置できます。ただし監査役にも任期があり、任期が切れれば重任の登記が必要です。人を増やすほど、毎年の手続と登記費用が積み上がっていくという点は、会社設立の前に理解しておいてください。

機関設計は後から変えられますが、変更登記が必要です。取締役会を廃止する、監査役を置かなくするといった変更にも登録免許税がかかります。将来必要になったら足すという考え方で、最初は最小構成から始めるのが無難です。

出典このセクションの出典:日本監査役協会|機関設計の図解(日本監査役協会/2026年9月16日 確認)

SECTION 06商号と事業目的|同じ住所の同名はNG、許認可の文言は必須

商号と事業目的|同じ住所の同名はNG、許認可の文言は必須

商号は会社の名前です。前か後ろに「株式会社」を付ける必要があります。使える文字は漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字・アラビア数字と、一部の記号に限られます。同一の住所に同一の商号がある場合は登記できません。

法律上は別住所なら同じ名前でも登記できますが、有名企業と同じ名前にすると不正競争防止法や商標の問題になることがあります。会社設立の前に、商標登録の検索と、同業他社の名前の確認はしておいたほうが安全です。

事業目的は許認可から逆算する

事業目的は、会社が行う事業を書く欄です。ここに書いていない事業ができなくなるわけではありませんが、許認可が必要な事業は、目的欄に所定の文言がないと申請できません。建設業、宅建業、人材派遣、古物商、飲食業などが該当します。

  • 許認可が必要な事業か、所管の窓口に確認したか
  • 許認可の申請に必要な文言を目的欄に入れたか
  • 目的の数が多すぎて何の会社か分からなくなっていないか
  • 末尾に「前各号に附帯関連する一切の事業」を入れたか

目的を後から追加するには、株主総会の特別決議と変更登記が必要で、登録免許税3万円がかかります。今やる事業と、1年以内にやる可能性が高い事業までを入れておき、それ以外は必要になってから足す、というのが実際的な落としどころです。

出典このセクションの出典:アイシア法律事務所|定款とは|絶対的・相対的・任意的記載事項(アイシア法律事務所/2026年9月16日 確認)

SECTION 07事業年度・公告方法・印鑑|最後だが、定款には必ず書く

事業年度・公告方法・印鑑|最後だが、定款には必ず書く

事業年度は決算期です。設立日から最も遠い月末にすると、1期目を12か月近く取れます。設立が9月なら8月末決算という具合です。1期目を長く取れば、決算作業の回数が減り、消費税の免税期間も実質的に長くなります。

公告方法は、決算公告などを何で行うかです。官報、日刊新聞紙、電子公告の三択で、定款に書きます。官報は掲載のたびに費用がかかり、電子公告は自社サイトに載せるだけなので掲載費用はかかりませんが、決算公告以外の公告では調査機関の調査が必要になる場合があります。

公告方法の選び方
株式会社には決算公告の義務があります。会社設立の時点で選んだ方法が、毎年の負担を決めます。

電子公告を選ぶなら自社サイトが前提になる

電子公告は掲載費用がかからない一方、自社のウェブサイトを5年間維持し続ける必要があります。サイトを閉じてしまうと公告義務を果たせません。設立したばかりの株式会社でサイトの運用が固まっていないなら、いったん官報を選び、体制が整ってから定款変更で電子公告に移すという順序も取れます。

印鑑は、法務局に届け出る会社実印を1本用意します。銀行印や角印はあとから作れます。オンラインで登記を申請する場合、印鑑の届出は任意になりましたが、実印を登録しないと会社の印鑑証明書が取れないため、実務上は登録しておくのが一般的です。

出典このセクションの出典:鮎澤パートナーズ|決算公告の義務と方法(鮎澤パートナーズ/2026年9月16日 確認)

SECTION 08まとめ|9項目の表を埋めれば、株式会社の設立準備は終わる

まとめ|9項目の表を埋めれば、株式会社の設立準備は終わる

株式会社の会社設立で決めることを、順番と変更コストつきでまとめます。この表が埋まれば、定款は書き写すだけになり、費用の見積もりも日程も確定します。

決めること9項目と、後から変えるときの手続
項目 何で決めるか 後から変えるには
本店所在地 管轄・地方税・賃貸契約 変更登記(3万円/6万円)
資本金の額 運転資金・許認可・消費税・信用 変更登記(増加額の0.7%、最低3万円)
発起人と出資額 誰が主導権を持つか 株式譲渡または新株発行
機関設計 人数を確保できるか 定款変更+変更登記
商号 同一住所の同名・商標 変更登記(3万円)
事業目的 許認可の要件 変更登記(3万円)
事業年度 1期目を長く取れるか 定款変更(登記は不要)
公告方法 毎年の費用と手間 定款変更+変更登記
会社実印 登記と契約で使う 改印届

変更登記が必要な項目には、いずれも登録免許税がかかります。会社設立の前に数日かけて決めるほうが、後から数万円と手間をかけて直すより安く済みます。特に資本金の額と機関設計は、決め直しの影響が大きい項目です。

なお、ここに書いた金額・要件は2026年9月16日時点の公開情報にもとづきます。登録免許税の額や定款認証の要件は改正されることがあるため、実際に手続をする前に法務局・公証役場の公式ページで確認してください。許認可が絡む事業目的や、複数人での出資比率の設計は、判断を誤ると影響が長く残ります。迷う部分は司法書士・行政書士・税理士など、その業務を扱える専門家に相談してから確定させることをおすすめします。

出典このセクションの出典:弥生|会社設立の方法・流れを詳しく解説(弥生株式会社/2026年9月16日 確認)

9項目が埋まったら、定款は半日で書けます

ここに挙げた9項目が全部埋まれば、株式会社の定款はテンプレートに書き写すだけになります。会社設立の準備で時間を食うのは書類作成ではなく、この意思決定の部分です。逆に言えば、ここを丁寧にやれば後の工程は驚くほど速く進みます。

資本金の額や機関設計のように、決めるのに判断材料が要る項目については、当サイトの個別記事でもう少し深く扱っています。許認可が絡む事業目的や、複数人で出資する場合の持株比率のように、間違えると影響が大きい部分は、司法書士や行政書士、税理士に相談したうえで決めることをおすすめします。

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