株式の譲渡制限と非公開会社|付けると何が変わるのかを設計の面から見る
全株式に譲渡制限を付けると非公開会社になります。機関設計の自由度が上がり、役員の任期も伸ばせます。

この記事は、譲渡制限を付けるかどうか迷っている人のためのものです
株式会社の会社設立で定款を書いていると、株式の譲渡制限という項目が出てきます。付けると何が変わるのかが分かりにくい項目です。
全株式に譲渡制限を付けた会社を非公開会社といいます。機関設計の自由度が上がり、役員の任期も伸ばせるようになります。この記事では、付けることで何が変わるのかを設計の面から整理します。内容は2026年9月16日時点の一次情報にもとづきます。
SECTION 01譲渡制限とは何か

株式の譲渡制限は、株式を譲渡するときに会社の承認を必要とする定款の定めです。株式会社の会社設立で定款に書くかどうかを選びます。
定めがなければ、株式は自由に譲渡できます。株主が誰に売っても、会社は止められません。
定めを置くと、譲渡には会社の承認が必要になります。承認機関は、株主総会、取締役会、代表取締役などから定款で定めます。
全株式に譲渡制限を付けた会社を非公開会社といいます。一部の株式にだけ付けることもできますが、実務では全株式に付けるのが通常です。
小規模な株式会社の会社設立では、ほぼすべてが非公開会社にしています。利点が大きく、欠点がほとんどないためです。
承認しない場合、会社または会社が指定する買取人が買い取ることになります。株主の出口が完全に閉じられるわけではありません。
なお、譲渡制限は資本金の額とは無関係です。資本金100万円の株式会社でも1,000万円の株式会社でも、付けるかどうかは自由に選べます。資本金の多寡で制度が変わることはありません。
譲渡制限は登記事項です。定款に定めたら、登記すべき事項にも記載してください。
以下では、付けることで何が変わるのかを四つの面から見ていきます。

出典このセクションの出典:GVA法人登記|株式譲渡制限会社とは?(GVA TECH/2026年9月16日 確認)
SECTION 02変わること1|機関設計の自由度

譲渡制限を付けると、機関設計の自由度が上がります。株式会社の会社設立で、最も実務に影響する変化です。
公開会社では、取締役会の設置が必須です。取締役3名以上と、原則として監査役が必要になります。
非公開会社では、取締役会を置かない設計を選べます。取締役1名・監査役なしで成立します。
これにより、ひとりで株式会社の会社設立ができるようになります。発起人・株主・取締役・代表取締役をすべて一人が兼ねる形です。
人数が少ないぶん、添付書類も少なくて済みます。就任承諾書も印鑑証明書も1通ずつです。
設立後の負担も軽くなります。役員が1名なら、任期満了ごとの重任登記も1名分で済みます。
また、取締役会を置かないことは、定款認証の手数料が1万5,000円になる要件のひとつです。会社設立の費用にも影響します。
資本金を自分ひとりで出し、自分ひとりが取締役になる。この形が成り立つのは、譲渡制限を付けて非公開会社にしているからです。資本金の出し手と経営者が同じであれば、機関を増やす必要がないという考え方です。
つまり、譲渡制限を付けることが、小規模な株式会社の会社設立を可能にしているとも言えます。
出典このセクションの出典:行政書士かんべ法務事務所|株式会社の機関設計とルール(かんべ法務事務所/2026年9月16日 確認)
SECTION 03変わること2|役員の任期を伸ばせる

譲渡制限を付けると、役員の任期を伸ばせるようになります。株式会社の会社設立で、設立後の手間に直結する変化です。
取締役の任期は原則2年、監査役は原則4年です。非公開会社であれば、定款で最長10年まで伸ばせます。
任期が満了すると、同じ人が続ける場合でも重任登記が必要です。登録免許税は資本金1億円以下の会社で1回1万円です。
任期を10年にすれば、10年間で登記は1回。2年のままなら5回です。10年で4万円の差になります。
手間の面でも違います。登記のたびに株主総会を開き、就任承諾書を作り、法務局に申請する。5回が1回になるのは大きな差です。
ただし、代わりに忘れるリスクが生まれます。10年後に重任登記を忘れ、最後の登記から12年が経過すると、みなし解散の対象になり得ます。
一人で株式会社を運営する場合、思い出させてくれる人がいません。任期を伸ばすなら、会社設立の直後にカレンダーへ登録してください。
なお、重任登記の登録免許税は資本金の額で変わります。資本金1億円以下なら1万円、それを超えると3万円です。会社設立の時点で資本金を大きくしすぎると、10年ごとの登記でも差が出てきます。
なお、譲渡制限を付けていないと任期を伸ばせません。この二つはセットで考えてください。
出典このセクションの出典:マネーフォワード|役員(取締役や監査役)の任期は10年?(マネーフォワード/2026年9月16日 確認)
SECTION 04変わること3|発行可能株式総数の制限がなくなる

譲渡制限を付けると、発行可能株式総数の制限がなくなります。株式会社の会社設立で株数を設計するときに効いてきます。
公開会社では、発行可能株式総数は設立時発行株式数の4倍までという制限があります。これが4倍ルールです。
既存株主の持分が無制限に薄まることを防ぐための規定です。公開会社では株主が多数いることが想定されています。
非公開会社では、この制限がありません。設立時発行株式数の何倍にしても構いません。
たとえば設立時に100株を発行し、発行可能株式総数を10,000株にすることもできます。将来の増資に大きな余裕を持たせられます。
枠に余裕があれば、増資のときに定款変更が不要になります。手続と費用が軽くなるということです。
ただし、極端に大きくしても実益はありません。実務では設立時発行株式数の4倍から10倍程度が選ばれます。
たとえば資本金300万円を1株1万円で発行すれば、設立時発行株式数は300株です。発行可能株式総数を3,000株としておけば、将来2,700株ぶんの増資余地が残ります。
なお、資本金の額と発行可能株式総数は別の話です。資本金を1株の金額で割った数が設立時発行株式数で、その何倍かを枠として定めます。
出典このセクションの出典:GVA法人登記|発行可能株式総数とは?変更方法(GVA TECH/2026年9月16日 確認)
SECTION 05変わること4|株式の流出を防げる

譲渡制限の本来の目的は、株式の流出を防ぐことです。株式会社の会社設立で、共同創業する場合に特に意味を持ちます。
定めがなければ、株主は誰にでも株式を売れます。共同創業者が抜けるときに、知らない人に株式が渡る可能性があります。
譲渡制限があれば、譲渡には会社の承認が必要です。会社が相手を選べるということです。
承認しない場合、会社または会社が指定する買取人が買い取ることになります。株主の出口は確保されつつ、相手は会社が決められます。
承認機関は定款で定めます。株主総会、取締役会、代表取締役のいずれかです。取締役会を置かない株式会社では、株主総会または代表取締役が一般的です。
相続で株式が移る場合は、譲渡ではないため承認の対象外です。事業に関わらない相続人が株主になることがあります。
これに備えるには、定款に相続人等に対する売渡請求の定めを置く方法があります。会社設立の時点で検討しておくと、後から定款変更をする手間が省けます。
共同創業では、誰がいくら資本金を出したかが持株比率になります。出資した以上、抜けるときに回収したいと考えるのは自然です。譲渡制限は、その回収の道を残しつつ、相手を会社が選べるようにする仕組みです。
なお、譲渡制限があっても株式の価値が下がるわけではありません。資本金として払い込んだお金の権利は、そのまま残ります。
出典このセクションの出典:GVA法人登記|株式譲渡制限会社とは?(GVA TECH/2026年9月16日 確認)
SECTION 06定款への書き方と登記

譲渡制限を付けるには、定款に定めます。株式会社の会社設立で、相対的記載事項として書く項目です。
書き方は、「当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない」といった形です。
承認機関を誰にするかを決めます。株主総会、取締役会、代表取締役のいずれかです。取締役会を置かない会社では、株主総会または代表取締役が選ばれます。
代表取締役を承認機関にすると、譲渡の承認を機動的に行えます。株主総会を開く必要がないためです。
定款に定めたら、登記すべき事項にも記載します。「株式の譲渡制限に関する規定」として、定款と同じ内容を書きます。
ここを書き漏らすと、登記簿に反映されません。非公開会社として扱われず、役員の任期も伸ばせなくなります。
株式会社の会社設立で見落としやすい項目です。定款と登記すべき事項を並べて確認してください。
定款のひな形の多くには、最初から譲渡制限の条項が入っています。削らずにそのまま使えば足ります。削ってしまうと公開会社になり、想定していた機関設計が組めなくなります。
変更登記の登録免許税は、この場合3万円です。会社設立の登録免許税が資本金の0.7%または15万円の高いほうであることと比べると小さい額ですが、避けられる出費ではあります。
後から追加することもできますが、株主総会の特別決議と変更登記が必要です。会社設立の時点で定めておくほうが簡単です。
出典このセクションの出典:日本公証人連合会|Q2. 株式会社の定款の記載事項(日本公証人連合会/2026年9月16日 確認)
SECTION 07付けない選択はあるか

譲渡制限を付けない選択もできます。ただし株式会社の会社設立で、小規模な会社がこれを選ぶ理由はほとんどありません。
付けなければ公開会社になります。取締役会の設置が必須となり、取締役3名以上と原則として監査役が必要です。
つまり、役員を4人以上そろえることになります。ひとりで会社設立をしたい場合には選べません。
発行可能株式総数も、設立時発行株式数の4倍までに制限されます。将来の増資の枠が狭くなります。
役員の任期も伸ばせません。取締役は2年、監査役は4年のままで、重任登記の回数が増えます。
定款認証の手数料でも不利になります。取締役会を置く旨の記載があると、1万5,000円の軽減区分から外れます。
公開会社が意味を持つのは、株式を広く流通させる場合です。将来の上場を見据えているなら選択肢になりますが、会社設立の段階で必要になることはまずありません。
実際、上場企業も設立当初は非公開会社だったところがほとんどです。資本金を増やし、株主が増え、体制が整った段階で公開会社に移行しています。順番が逆になることはまずありません。
上場を目指す場合でも、まず非公開会社として設立し、段階に応じて移行するのが通常です。資本金の額と同じく、必要になってから変えれば足ります。
出典このセクションの出典:GVA法人登記|株式譲渡制限会社とは?(GVA TECH/2026年9月16日 確認)
SECTION 08譲渡制限についてよく聞かれること

- 承認機関はどれを選べばよいですか?
- 取締役会を置かない株式会社であれば、株主総会または代表取締役が一般的です。代表取締役にすると機動的に承認できます。株主が自分ひとりなら、どちらでも実質的な差はありません。
- 一部の株式にだけ付けられますか?
- 種類株式として、一部の株式にだけ譲渡制限を付けることもできます。ただしその場合は全株式に譲渡制限がある会社ではなくなるため、非公開会社の利点が使えなくなります。株式会社の会社設立では、全株式に付けるのが通常です。
- 相続で株式が移る場合も承認が必要ですか?
- 相続は譲渡ではないため、承認の対象外です。事業に関わらない相続人が株主になることがあります。備えるには、定款に相続人等に対する売渡請求の定めを置く方法があります。
- 後から外すことはできますか?
- 株主総会の特別決議で定款を変更し、変更登記をすれば外せます。ただし外すと公開会社になり、取締役会の設置が必須になります。会社設立の後に外す場面はほとんどありません。
質問に共通しているのは、付けることの効果の広さです。株式会社の会社設立で譲渡制限を付けるかどうかは、株式の流出防止だけでなく、機関設計と任期にも影響します。
出典このセクションの出典:GVA法人登記|株式譲渡制限会社とは?(GVA TECH/2026年9月16日 確認)
SECTION 09まとめ|付けるのが標準。登記すべき事項への記載も忘れずに

全株式に譲渡制限を付けた会社を非公開会社といいます。株式会社の会社設立では、小規模な会社のほぼすべてが選んでいます。
機関設計
取締役会を置かない設計を選べる。取締役1名・監査役なしで成立。
役員の任期
定款で最長10年まで伸ばせる。重任登記の回数が減る。
発行可能株式総数
4倍ルールが適用されない。枠を自由に決められる。
流出防止
意図しない相手が株主になることを防げる。
付けないと公開会社になり、取締役会の設置が必須になります。役員を4人以上そろえることになるため、ひとりでの会社設立ができません。
定款に定めるだけでなく、登記すべき事項にも記載してください。書き漏らすと登記簿に反映されず、非公開会社として扱われません。
承認機関は、取締役会を置かない株式会社であれば株主総会または代表取締役が一般的です。代表取締役にすると機動的に承認できます。
発行可能株式総数は、設立時発行株式数の4倍から10倍程度が目安です。資本金と1株の金額から設立時発行株式数を出し、その何倍かを枠として定めてください。
相続については承認の対象外です。備えるには、定款に相続人等に対する売渡請求の定めを置く方法があります。会社設立の時点で検討しておいてください。
なお、この記事の内容は2026年9月16日時点の会社法にもとづきます。条文や取扱いは改正されることがあるため、実際の手続の前に法務局の公式情報でご確認ください。定款の設計で迷う場合は、司法書士など、その業務を扱える専門家にご相談ください。
出典このセクションの出典:GVA法人登記|株式譲渡制限会社とは?(GVA TECH/2026年9月16日 確認)
付けるなら、登記すべき事項への記載も忘れずに
譲渡制限は登記事項です。定款に定めるだけでなく、登記すべき事項にも記載してください。書き漏らすと登記簿に反映されず、非公開会社として扱われません。
小規模な株式会社の会社設立では、譲渡制限を付けるのがほぼ標準です。機関設計の自由度と役員任期の伸長という利点が大きいためです。承認機関の設計で迷う場合は、公証役場の事前確認や司法書士への相談も活用してください。
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