本店所在地をどこにするか|自宅・レンタルオフィス・バーチャルオフィスを比べる
本店所在地は管轄の法務局と地方税の納付先を決めます。自宅でもレンタルオフィスでも登記できますが、後の手続に差が出ます。

この記事は、本店をどこにするか決めかねている人のためのものです
株式会社の会社設立で、本店所在地は定款の絶対的記載事項です。決めなければ定款が書けません。ところがどこでもよいと言われると、かえって決められないものです。
本店所在地は、管轄の法務局を決め、地方税の納付先を決め、法人口座の開設や許認可の申請にも影響します。この記事では四つの選択肢を比べ、それぞれの影響を整理します。内容は2026年9月16日時点の一次情報にもとづきます。
本店所在地が決めるもの

本店所在地は、株式会社の会社設立で複数の事柄を同時に決めます。住所を選ぶだけの話ではありません。
ひとつめは管轄の法務局です。設立登記の申請先が決まり、その後の変更登記もそこに出すことになります。
ふたつめは地方税の納付先です。法人住民税と法人事業税を納める都道府県と市区町村が決まります。法人住民税の均等割は自治体ごとに額が違います。
みっつめは社外からの見え方です。本店所在地は登記簿に載り、誰でも確認できます。取引先や求職者が見る情報になります。
よっつめは郵便の届き先です。法務局からの通知、税務署や年金事務所からの書類、取引先からの請求書。すべて本店宛てに届きます。
いつつめは許認可の要件です。業種によっては、事務所の広さや独立性が要件になっていることがあります。
これらを踏まえて選ぶことになります。会社設立の後に移転すると変更登記が必要で、同一管轄内で3万円、管轄外なら6万円の登録免許税がかかります。
なお、本店所在地と資本金の額は独立して決められます。資本金が少ないから自宅にしなければならない、多いから事務所を借りなければならないという関係はありません。株式会社の会社設立では、事業の実態に合わせて別々に判断してください。
以下では、四つの選択肢を比べていきます。それぞれの利点と、注意すべき点を整理します。

出典このセクションの出典:法務局|商業・法人登記の手続案内(法務局/2026年9月16日 確認)
選択肢1|自宅を本店にする

最も費用がかからないのが、自宅を本店にする方法です。株式会社の会社設立で、多くの人が最初に検討する選択肢です。
会社法に住所の種類による制限はありません。持ち家でも賃貸でも、マンションでも戸建てでも登記できます。
持ち家であれば、基本的に問題は生じません。マンションの場合、管理規約で用途が住宅に限定されていることがあるため、確認しておくと安心です。
賃貸物件では注意が必要です。契約や管理規約で法人登記が禁じられていることがあります。登記自体は受理されますが、契約違反を問われる可能性があります。
法律の問題ではなく契約の問題なので、大家や管理会社に確認してください。事務所使用が認められない物件では、別の選択肢を考えることになります。
自宅を本店にすると、登記簿に自宅の住所が載ります。誰でも閲覧できるため、プライバシーの面で気になる人もいます。
なお、代表取締役の住所も登記事項です。自宅を本店にしない場合でも、代表者の住所は登記簿に載るという点は知っておいてください。
自宅を本店にすると、家賃の一部を会社の経費にできる場合があります。事業に使っている割合で按分する形です。株式会社では社宅の仕組みを使う方法もあり、資本金の額とは別に、こうした設計の余地が生まれます。詳しくは税理士にご確認ください。
郵便が確実に届くことは大きな利点です。会社設立の直後は期限のある通知が集中するため、見落としのリスクが低くなります。
出典このセクションの出典:法務局|商業・法人登記の手続案内(法務局/2026年9月16日 確認)
選択肢2|レンタルオフィス・シェアオフィス

レンタルオフィスやシェアオフィスを本店にする方法もあります。実際に作業するスペースがあるため、株式会社の会社設立の後の説明がしやすくなります。
月額の利用料がかかります。個室か共用スペースか、立地はどこかによって、数千円から数万円まで幅があります。
登記できるかどうかは、提供事業者によって異なります。登記可のプランと不可のプランが分かれていることもあるため、契約前に確認してください。
郵便物の受け取りサービスが付いていることが多くあります。法務局や税務署からの通知を確実に受け取れる点は利点です。
法人口座の開設でも、自宅やバーチャルオフィスより説明しやすい傾向があります。実際に作業スペースがあるためです。
許認可が必要な事業では、独立した事務所であることが要件になっていることがあります。共用スペースでは要件を満たさない場合があるため、所管官庁に確認してください。
資本金の額を抑えて株式会社の会社設立をした場合、月額の利用料が固定費として重くなることがあります。運転資金の計算に入れてください。
来客の予定があるかどうかも判断材料になります。打ち合わせスペースが使えるプランなら、取引先を招くこともできます。株式会社の会社設立の直後から対面の商談が想定されるなら、この点は費用に見合う価値があります。
なお、退去すると本店を移転することになり、変更登記が必要です。長く使う前提で選ぶほうが、後の費用を抑えられます。
出典このセクションの出典:法務局|商業・法人登記の手続案内(法務局/2026年9月16日 確認)
選択肢3|バーチャルオフィス

バーチャルオフィスは、住所だけを借りるサービスです。作業スペースはなく、月額の費用も安く抑えられます。
登記に使えるかどうかは、提供事業者によります。株式会社の会社設立で使う場合は、登記可能なプランかを確認してください。
利点は費用です。月額数千円程度から利用でき、一等地の住所を使えることもあります。自宅の住所を公開したくない場合の選択肢にもなります。
注意点は、同じ住所に多数の会社が登記されていることです。法人口座の開設で追加の説明を求められることがあります。
金融機関は、事業の実態を確認します。バーチャルオフィスが理由で口座が開けないわけではありませんが、事業計画書や取引先との契約書を用意しておくと説明しやすくなります。
許認可が必要な事業では、要件を満たさないことが多くあります。宅地建物取引業や有料職業紹介事業など、独立した事務所が要件になっている業種では使えません。
郵便物の転送サービスが付いていることが多いのですが、転送に日数がかかることがあります。期限のある通知を見落とさないよう、頻度を確認してください。
資本金が少ない株式会社がバーチャルオフィスを本店にすると、法人口座の開設で厳しく見られることがあります。会社設立の設計として、組み合わせに注意してください。
出典このセクションの出典:法務局|商業・法人登記の手続案内(法務局/2026年9月16日 確認)
選択肢4|実家や親族の住所

実家や親族の住所を本店にすることもできます。株式会社の会社設立で、自宅が賃貸で登記できない場合などに検討されます。
所有者の承諾があれば、費用はかかりません。持ち家であれば、契約上の制限も生じにくくなります。
最大の課題は郵便の受け取りです。法務局や税務署からの通知が実家に届くため、誰かが受け取って転送する必要があります。
期限のある通知を見落とすと、過料の対象になったり、税の申告が遅れたりします。会社設立の後、継続的に対応できる体制が必要です。
また、実家が遠方だと管轄の法務局も遠くなります。変更登記や証明書の取得で不便になることがあります。ただし証明書は全国どこの法務局でも取れます。
地方税の納付先も実家の所在地になります。法人住民税の均等割は自治体ごとに額が違うため、確認しておくと安心です。
事業を行う場所と本店が離れていることになりますが、法律上の問題はありません。本店は登記上の住所であり、事業を行う場所と一致している必要はありません。
家族が会社の役員や従業員である場合は、実家を本店にすることに無理がありません。郵便の受け取りも任せられます。株式会社の会社設立で家族と一緒に事業を行うなら、自然な選択肢になります。
なお、許認可が必要な事業では、実際に事業を行う場所が要件になることがあります。株式会社の会社設立の前に、所管官庁に確認してください。
出典このセクションの出典:法務局|商業・法人登記の手続案内(法務局/2026年9月16日 確認)
四つの選択肢を比べる

四つの選択肢を比べます。株式会社の会社設立で、自分の事業に合うものを選んでください。
| 選択肢 | 費用 | 郵便の受け取り | 法人口座の開設 |
|---|---|---|---|
| 自宅(持ち家) | 0円 | 確実 | 問題になりにくい |
| 自宅(賃貸) | 0円 | 確実 | 契約の確認が必要 |
| レンタルオフィス | 月数千円〜数万円 | サービスあり | 説明しやすい |
| バーチャルオフィス | 月数千円〜 | 転送に日数 | 説明を求められることも |
| 実家・親族の住所 | 0円 | 転送が必要 | 問題になりにくい |
費用だけで見れば自宅か実家です。ただし賃貸なら契約の確認が必要で、実家なら郵便の受け取り体制が課題になります。
法人口座の開設を重視するなら、自宅かレンタルオフィスが無難です。バーチャルオフィスは説明の手間が増える傾向があります。
許認可が必要な事業では、事務所の要件を満たすかどうかが最優先になります。所管官庁に確認してから選んでください。
なお、資本金の額と本店の選択は独立した判断です。ただし、資本金が少なくバーチャルオフィスという組み合わせは、会社設立の後の手続で説明を求められやすくなります。
出典このセクションの出典:GMOあおぞらネット銀行|会社設立に必要な要件は?(GMOあおぞらネット銀行/2026年9月16日 確認)
定款には市区町村まで書くか、番地まで書くか

本店所在地が決まったら、定款にどう書くかを決めます。株式会社の定款では、市区町村までか番地までかを選べます。
市区町村まで(東京23区なら区まで)書く場合、同一市区町村内で移転しても定款変更が不要になります。登記簿には番地まで載るため、移転登記自体は必要です。
番地まで書く場合、本店所在場所を決めた決議書を省略できます。会社設立の添付書類を一枚減らせるということです。
ただし、同一市区町村内の移転でも定款変更が必要になります。株主総会の特別決議を経ることになり、手間が増えます。
将来の移転の可能性が高いなら、市区町村までにしておくのが無難です。自宅から事務所へ移る予定がある場合などです。
逆に、長く同じ場所を使う前提であれば、番地まで書いて添付書類を減らすという選択もあります。
なお、登記申請書と登記すべき事項には、定款の書き方にかかわらず番地まで書きます。定款の記載と登記簿の記載は別物です。
表記は正式なものにします。「○丁目○番○号」といった形で、省略しないでください。住居表示と地番が異なる地域では、どちらを使うかを法務局に確認してください。
出典このセクションの出典:日本公証人連合会|Q2. 株式会社の定款の記載事項(日本公証人連合会/2026年9月16日 確認)
本店所在地についてよく聞かれること

- 本店と事業を行う場所が違ってもよいですか?
- 問題ありません。本店は登記上の住所であり、事業を行う場所と一致している必要はありません。ただし許認可が必要な事業では、実際に事業を行う場所が要件になることがあります。
- 引っ越したら必ず移転登記が必要ですか?
- 本店を移す場合は必要です。生活の住所が変わっても、本店をそのままにしておくなら登記は不要です。ただし郵便が届かなくなると困るため、株式会社の会社設立の後は実態に合わせて管理してください。
- 移転にいくらかかりますか?
- 同一の法務局の管轄内なら登録免許税3万円、別の管轄へ移す場合は新旧2庁分で6万円です。定款に番地まで書いている場合は定款変更も必要になります。
- 支店を置くこともできますか?
- できます。ただし支店の登記が必要になり、費用もかかります。株式会社の会社設立の時点で支店を置くことは多くありません。まず本店だけで設立し、必要になってから追加するほうが単純です。
質問に共通しているのは、登記上の住所と実際の場所の関係です。株式会社の会社設立では、本店は登記上の住所であり、事業を行う場所と一致している必要はありません。この区別を押さえておいてください。
出典このセクションの出典:法務局|商業・法人登記の手続案内(法務局/2026年9月16日 確認)
まとめ|登記できるかを確認し、郵便が届く場所を選ぶ

株式会社の会社設立で本店所在地を選ぶときは、費用よりも登記できるかどうかと、郵便が確実に届くかどうかを優先してください。
自宅
費用0円。賃貸なら契約と管理規約を確認。郵便は確実。
レンタルオフィス
月数千円〜。実体があるため説明しやすい。許認可の要件も満たしやすい。
バーチャルオフィス
費用は最安。法人口座や許認可で説明を求められることがある。
実家・親族の住所
費用0円。郵便の受け取り体制を作る必要がある。
本店所在地は、管轄の法務局、地方税の納付先、社外からの見え方、郵便の届き先、許認可の要件を同時に決めます。会社設立の後に効いてくる項目が多くあります。
定款には市区町村までか番地までかを選べます。将来の移転の可能性が高いなら市区町村まで、長く使う前提なら番地まで書いて添付書類を減らすという選択があります。
移転には登録免許税がかかります。同一管轄内で3万円、管轄外なら6万円です。最初の選択は慎重に行ってください。
許認可が必要な事業では、事務所の要件が定められていることがあります。株式会社の会社設立の前に、所管官庁に確認しておいてください。資本金の額とあわせて要件を満たす必要があることもあります。
なお、この記事の内容は2026年9月16日時点の公開情報と一般的な傾向にもとづきます。金融機関や許認可の取扱いは変わることがあるため、実際の判断にあたっては各機関にご確認ください。
出典このセクションの出典:GMOあおぞらネット銀行|会社設立に必要な要件は?(GMOあおぞらネット銀行/2026年9月16日 確認)
決めたら、登記できるかどうかを先に確認してください
本店所在地の候補が決まったら、そこで法人登記ができるかを確認します。賃貸なら管理会社に、バーチャルオフィスなら提供事業者に、登記の可否を聞いてください。
許認可が必要な事業では、事務所の要件が定められていることもあります。株式会社の会社設立の前に、所管官庁に確認しておくと後戻りを避けられます。移転には登録免許税がかかるため、最初の選択は慎重に行ってください。
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